ザリフ氏は会見の冒頭、トランプ政権の「最大限の圧力政策」について語気を強めて批判した。「トランプ氏のやり方は失敗し、(イランの譲歩を引き出すという)意図した結果を得られず、イランの一般市民を傷つけるだけだった」としてイランに「経済テロ」を仕掛けたと主張した。トランプ政権はイランの核保有を危惧してウラン濃縮停止などを求めて圧力をかけ続けたが、イランは逆にウラン濃縮を強化し、高性能遠心分離機の開発を推進した。ザリフ氏はトランプ氏の対イラン政策は「大失敗に終わった」と断言した。 バイデン政権に対して、ザリフ氏は「バイデン大統領は今、決断をしなければならない。トランプ前大統領の(負の)遺産を終わらせるのか。あるいは継承したいのかだ」と決断を迫った。その上で「もしバイデン氏がトランプ氏の遺産を継承する考えであれば、彼は奇跡を生み出すことはできないだろう」とあくまで制裁解除を求める姿勢を示した。近年の対立を考える上で起点になるのが、米英仏中ロ独とイランの間で「核合意」(英語ではJoint Comprehensive Plan Of Actionの頭文字を取ってJCPOAと呼ばれることが多い)が結ばれた15年だ。その肝は、イランが核開発を大幅に制限する見返りに、米欧などが制裁を解除するという点にあった。トランプ前政権は18年、核合意では主要国の反対を無視して一方的に離脱し、それ以降、合意前の制裁を全て復活させて新たな制裁を次々発動した。イランは対抗して、19年5月から合意の履行を段階的に停止し、今年1月にはウラン濃縮度を兵器級に近づくとされる20%に高める挑発行為に出た。イランは制裁で人道物資である医薬品や食料の輸入が困難になったとしている。ザリフ氏は、新型コロナウイルス感染症のワクチンの買い付けにも支障が出ていると訴えた。
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