【ワシントン=黒瀬悦成】バイデン米大統領は4日、国務省で就任後初となる外交政策演説を行った。バイデン氏は中国を「最も手ごわい競争相手」と位置づけ、「米国の繁栄と安全、民主的価値観は中国の直接的な挑戦を受けている」と指摘した上で、中国による経済分野での不当行為と対決し、人権侵害、知的財産の窃取などの「攻撃的で強圧的な行動」に対抗していくと表明した。
バイデン氏は「米国は各国との同盟関係を修復し、再び世界と関与していく」と述べ、「同盟重視・国際協調」の立場を改めて表明した上で、「中国は米国と肩を並べる野心を拡大させ、ロシアは米国の民主体制を破壊する決意を固めている。米国は、こうした権威主義が台頭する新たな局面に対応しなくてはならない」と訴えた。
中国に対しては「米国の国益に沿うのであれば、一緒に取り組む用意がある」とも指摘した。
ロシアとの関係では、トランプ前大統領がプーチン露大統領に対し米大統領選への干渉を直接批判しなかったことなどを念頭に「前任者のようにロシアの侵略行為や米選挙への干渉、サイバー攻撃などに抵抗しない時代は終わった」とし、ロシアとの対決をためらわない立場を強調した。
民主派指導者ナワリヌイ氏の即時無条件釈放も改めて要求した。
また、過去2週間に電話首脳会談を行った日本と韓国、英仏独、オーストラリア、カナダ、メキシコと北大西洋条約機構(NATO)を「最も近い友邦」と呼び、民主主義諸国による同盟の影響力の再構築を進めていくと言明した。
米軍の世界展開をめぐっては、オースティン国防長官の主導で「米国の外交・安全保障上の優先度に応じて見直しを進める」とし、その間はトランプ政権が決めたドイツ駐留米軍の削減を凍結すると発表した。
「最悪の人道危機」とされるイエメン内戦の終結に向け、内戦に介入するサウジアラビア主導の連合軍による軍事作戦への支援を停止することも明らかにした。一方で、イラン系武装勢力の攻撃にさらされるサウジの防衛力向上を支援することも確約した。
また、各国からの難民の受け入れの上限に関し、前政権は年間1万5000人だったのを、就任初年度に12万5000人に引き上げることを目指すと表明した。
ミャンマーでのクーデターについては、国軍に「権力の放棄」と拘束した高官や活動家の釈放、暴力の自制を求め、クーデターを起こした関係者らに「責任を取らせる」と警告した。バイデン氏の演説に先立ち、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はホワイトハウスで記者会見し、国軍高官や国軍の資金源となっている団体に対する独自制裁を検討していることを明らかにした。
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