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新型コロナ:コロナワクチン「90%の有効性」 死角はないのか - 日本経済新聞

米ファイザーと独ビオンテックが開発中の新型コロナウイルスワクチンは、中間解析での有効性が90%を超える

米ファイザーと独ビオンテックが開発中の新型コロナウイルスワクチンは、中間解析での有効性が90%を超える

日経バイオテク

米ファイザーと独ビオンテックは9日、新型コロナウイルス感染症に対して開発中のワクチン「BNT162b2」で90%を超える有効性が示されたと発表した。これは、最終段階にあたる第3相臨床試験の中間解析を初めて実施した結果。あくまで中間解析のデータではあるが、発表を受けて日米欧の株価は大幅に上昇している。

この第3相試験は、18~85歳の被験者4万3998人を対象として、ワクチン「BNT162b2」接種群またはプラセボ(偽薬)接種群に同じ割合でランダム(無作為)に割り付け、安全性と有効性を評価する(医師にのみ割り付けを隠して実施)。2020年7月から、米国、ブラジル、アルゼンチン、南アフリカ、ドイツなどの154施設で実施されている。これまでに4万3538人の被験者が登録され、11月8日までに3万8955人が2回接種を完了した。

外部の独立データモニタリング委員会が初めて中間解析を実施した。その結果、過去に新型コロナウイルスへの感染歴が無い被験者のうち、2回目の接種から7日後までに新型コロナウイルス感染症を発症した人が合計で94人に上った。その内訳を調べたところ、ワクチン接種群とプラセボ接種群を比較して、90%を超える発症予防効果が示されたという。これまでのところ、重篤な有害事象は認められていない。

一般にワクチンの有効性は、被験者の一方にワクチン、もう一方にプラセボ(非接種のこともある)を接種し、「ワクチン接種群で発症した被験者の数」と「プラセボ接種群で発症した被験者の数」を比較して、ワクチンの接種によって病気にかかるリスクをどの程度減らせたかで評価する。例えば、1000人にワクチン、1000人にプラセボを接種し、ワクチン接種群で100人が発症し、プラセボ接種群で200人が発症すると、有効性は50%となる。

ただ、新型コロナウイルス感染症のように感染率が低かったり、感染しても発症しないケースがあったりする場合、ワクチン接種群でもプラセボ接種群でも、臨床試験の追跡期間中に発症する割合が非常に限られるのが課題だ。そのため新型コロナウイルス感染症のワクチン開発では、製薬企業が数万人の被験者を対象とする規模の大きい臨床試験を組むのが珍しくない状況になっている。

■重症度や免疫の持続期間は不明

今回の中間解析では、(1)2回目の接種から7日後までに被験者全体で94人が新型コロナウイルス感染症を発症した(2)90%を超える有効性が示された──ことが明らかになった。それ以上の詳細は明らかではないので、ここでは「90%を超える有効性」がどういうことなのか考えてみる。

今回の中間解析の結果のイメージ(日経バイオテク作成)。各群は2万人以上なので、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症した被験者(黒)はわずかで、発症していない被験者(グレー)はもっと多い

今回の中間解析の結果のイメージ(日経バイオテク作成)。各群は2万人以上なので、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症した被験者(黒)はわずかで、発症していない被験者(グレー)はもっと多い

計算上は、ワクチン接種群で新型コロナウイルス感染症を発症したのは8人以下にとどまり、プラセボ接種群では発症したのは86人以上になったということになる。ただし、プラセボ接種群とワクチン接種群のそれぞれで、正確な発症者数は現時点で明らかになっていない。また、各群での発症者の重症度などはまったく分かっていない。さらにいえば、開発中のワクチン接種によって誘導される免疫が、どのぐらい長く続くかもまだ分からない。

世界保健機関(WHO)は4月末、新型コロナウイルス感染症のワクチンに求められる望ましい有効性として「少なくとも70%」「最低でも50%以上」との見解を示している。米食品医薬品局(FDA)も、同ワクチンの指針で50%以上の有効性を求めている。少なくとも、今回示された「90%を超える有効性」は、そうした基準を満たすものと考えられる。

ただし今後、承認されたり、最終解析が行われたりするまでには、ワクチン接種群でもプラセボ接種群でも、より多くの被験者が新型コロナウイルス感染症を発症することになる。その結果、それぞれの接種群で発症した被験者の数によっては、有効性が90%より大幅に低くなる可能性もある。また、抗体依存性感染増強(ADE)やワクチン関連の呼吸器疾患増強(VAERD)も含め、安全性の新たなデータが出てくる可能性もあるだろう。

ファイザーとビオンテックは、今後も引き続き第3相試験の被験者登録を進める計画だ。また、安全性と有効性の情報を収集し、安全性のマイルストーン(目標)を達成した上で、11月第3週以降に緊急使用許可(EUA)の取得に向け、FDAに申請したい考え。また、2回目の接種から7日後までに発症者が164人に達した時点で、第3相試験の最終解析を実施する計画だ。その際は、2回目の接種から7日後までの発症予防効果だけでなく、接種から14日後までの発症予防効果、重症化の予防効果、新型コロナウイルスの感染予防効果についても評価する。過去に感染歴が無い被験者だけでなく、感染歴のある被験者を含めた形での解析も実施する。

両社は、20年内に開発中のワクチンを5000万回分、21年までに13億回分を製造し、グローバルに供給する計画だ。うち、1億2000万回分は、21年6月までに日本へ供給することで日本政府と合意している。ただ、超低温での管理が必要となり、セ氏マイナス60~マイナス80度程度で輸送したり、保存したりすることが必要になるとみられる。日本を含め、世界中でどのような体制で供給するのかが実用化への課題になりそうだ。

また、どのようなワクチンであっても、第3相試験までに把握できる有効性や安全性の知見は限られている。そのため承認後に大規模な接種が行われれば、ワクチンとの因果関係があるかどうかに関わらず、一定の有害事象が起きる可能性は高まる。

開発中のワクチン「BNT162b2」は、新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質の遺伝情報を持った、自己増殖性のメッセンジャーRNA(mRNA)を脂質ナノ粒子に封入したmRNAワクチンだ。投与後、mRNAからスパイクたんぱく質が発現し、新型コロナウイルスへの免疫を誘導する機序を持つ。

(日経バイオテク 久保田文)

[日経バイオテクオンライン 2020年11月11日掲載]

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