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トランプの敗北が世界的に見て「異例」だった理由 - Newsweekjapan

<米民主党は政権交代に成功したが、世界中、ポピュリスト政権を野党が選挙で蹴落とした例はごくわずか。なぜ勝てたのか。選挙戦で最も重要だったのは「過激に走らない程度の大胆さ」だった>

(2月16日発売の本誌「ポピュリズム2.0」特集より)

独善的なポピュリストを選挙で追い落とすのは楽じゃない。先の米大統領選に関する多くの論評には、この点への言及が欠けていた。

世界中を見渡しても、独善と独断ゆえに大衆の支持を勝ち得た(つまり一度は選挙に勝った)指導者を、次の選挙で野党陣営が蹴落とした例はごくわずかだ。
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こういう人物は規範を破り、大衆の怒りをあおり、良識的なやり方を無視することで支持者を熱狂させ、権力基盤を固める。

いい例が中南米諸国で、この手の人物が長く権力を掌握してきた。1980年代以降に選挙で政権を追われたのは2人だけだ。ニカラグアのダニエル・オルテガ(1990年)とドミニカ共和国のイポリト・メヒーア(2004年)。それ以外の独裁者は、選挙に勝っても別な理由で退任を強いられた。

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軍の圧力を受け辞任したモラレス REUTERS


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ボリビアのエボ・モラレスは2019年に軍の圧力で逃げ出し、ペルーのアルベルト・フジモリは2000年に自身への批判の高まりを受け日本に事実上の亡命。コロンビアのアルバロ・ウリベは2010年に憲法の規定で大統領選への再出馬を阻まれた。

こうして見ると、昨年の米大統領選で民主党が政権交代に成功したのは、世界的に見ても異例なことだった。

しかしアメリカの特殊事情はさておいても、これだけは言える。党の団結と有権者の動員、そして過激に走らない程度の大胆さがあれば、私たちは危険なポピュリズムの支配に選挙で勝てる。

ただし、民主的な諸制度が独善的ポピュリズムに勝ったと思うのは間違いだ。もちろん、トランプ政権の成立後もアメリカの司法制度や社会、報道機関が独立を維持し、大統領の権力乱用を抑制するのに役立ったのは事実。しかしトランプ政権下で、これらの民主的諸制度が力をそがれたのもまた事実だ。

だからこそ大勢の国民がトランプの主張を受け入れた。そしてトランプ自身(そして共和党議員の多く)が今も、あの選挙は「盗まれた」という主張を下ろしていないところを見ると、トランプ派は今後も一定の影響力を保ち続けるとみたほうがよさそうだ。

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市民からの批判を受け任期途中で退任したフジモリ DAVID MERCADO-REUTERS

大事なのは反対勢力の団結

言い換えれば、独立した司法機関や市民社会、報道などの民主的な制度だけではトランプを、そしてトランプ主義を打ち負かすのは無理だった。選挙で勝つには他の手助けが必要だった。ここに、独善的ポピュリストと戦う他の諸国でも役立つ教訓がある。

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