
欧米諸国と中国との対立が高まるなか、アメリカ、EU(=ヨーロッパ連合)とイギリス、カナダは2021年3月22日、中国・習近平政権が新疆ウイグル自治区での人権侵害を続けているとして制裁措置を発動した。 ⇒【画像】オーストラリアで起きたウイグル弾圧に対するデモ 国連によると、中国はイスラム教徒のウイグル人を約100万人を収容し、洗脳や拷問、強制労働を強いているとされる。すでに欧米諸国やオーストラリア、トルコなどではウイグル人弾圧に対する抗議デモが起きている。
H&Mやナイキの不買運動が広がる
その影響は政治だけでなく、市民の日常生活にも迫っている。 強制労働が行われている新疆ウイグル産の綿花を使わないと表明するスウェーデン衣料品大手「H&M」や米スポーツ用品大手の「ナイキ」といった外国企業に対して、中国のネットやSNS上では「外国企業の行動には納得できない」「もうH&Mやナイキの商品なんて買うな」と、反発や不買運動を呼び掛ける声が広がっている。 また、中国の歌手や芸能人がこの問題に懸念を表明した外国企業との契約解除を相次いで表明。今後もアメリカを中心とする欧米諸国と中国との対立によって不買運動が過熱する恐れがある。
高まる「中国人のナショナリズム」
中国が世界第2位の経済大国となり、今後、アメリカを逆転するとも言われるなか、平均所得が向上するだけでなく、中国人としての自尊心は高まる一方だ。 筆者も長年にわたり、中国人の専門家と密に話す機会があるが、プライドを強く持つようになっているだけでなく、「中国は大国になった」「アメリカがライバル」といった意識も抱くようになっていると感じる。 よって、欧米諸国から制裁を課されようが、断固として対抗する声も増していて、ナショナリズムの高揚も相まって、不買運動を求める声が起きている。習政権も国民からの不満や反発は避けたいことから、今回の“不買運動呼び掛け”を支持するという立場を鮮明にしている。
難しい立場の日本
このような不買運動は日本にとっても対岸の火事ではない。不買運動を巡る動きの原因は、強制労働を強いられるウイグル人が作った新疆ウイグル産の綿花を使わないことだった。 すでに国内大手アパレルのファーストリテイリングは2020年8月に声明で、主力ブランドのユニクロについて「新疆ウイグル自治区で生産されている製品はない」と発表したことに対し、中国の俳優3人がCM契約の解除を申し出る事態も起きている。彼らは「悪意あるデマを阻止する」と主張していて、背景にウイグル問題があったことは明らかだ。 そして、日本政府はウイグル問題を巡っては欧米と中国との間で非常に難しい立場にある。 欧米のように中国に制裁を発動しなくても、日本政府がウイグル問題を強く非難、もしくは今の姿勢を維持していれば、ユニクロのように他の日本企業が不買運動の標的になる可能性がある。
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