ビラに「人類は金正恩を糾弾する」、５０万枚を風船で北に向け飛ばす…韓国の脱北者団体 - 読売新聞

　【ソウル＝建石剛】韓国の脱北者団体「自由北韓運動連合」は３０日、北朝鮮の金正恩（キムジョンウン）体制を批判するビラ計５０万枚を大型風船で北朝鮮に向けて飛ばしたことを明らかにした。韓国でビラ散布を禁止する法律が３月に施行されて以降、散布が明らかになるのは初めてだ。

　団体によると、４月２５～２９日、南北の軍事境界線付近から２回に分けて、ビラに加えて小冊子５００冊、１ドル紙幣５０００枚を１０個の大型風船に付けて北朝鮮側に飛ばした。ビラには「人類は金正恩（朝鮮労働党総書記）を糾弾する」などの文言が書かれていた。

　ビラ散布を巡っては、昨年６月に正恩氏の妹の金与正（キムヨジョン）氏が強く反発する談話を出し、北朝鮮は南北共同連絡事務所を爆破した。与正氏はビラを規制する法律の制定を韓国に求め、文在寅（ムンジェイン）政権と与党は３年以下の懲役などの罰則を盛り込んだビラ禁止法を制定した。

　同法に対しては、北朝鮮住民に外部情報を知らせる手段を制限し、住民の人権状況悪化につながるとして国内外で批判が上がっている。米議会下院では４月に公聴会が開かれ、表現の自由などに懸念が示された。

　今回のビラ散布について韓国統一省の副報道官は３０日、「事実関係が確認されれば、法の趣旨にのっとって対処する」と述べた。文政権がビラ禁止法を根拠に脱北者団体の処罰を進めれば、人権を重視する米バイデン政権との摩擦につながりかねない。一方、北朝鮮は再び韓国に圧力を強める可能性があり、文政権の判断に注目が集まっている。

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