香港の民主派系新聞「蘋果(ひんか)(りんご)日報」が廃刊となった。香港国家安全維持法(国安法)に基づき、当局が会社資産を凍結し、経営が行き詰まった。
警察当局は「数十本の記事で外国に中国や香港への制裁を呼びかけた」と主張している。
24日付が最後の紙面となった。「別れの書」と題した社説は「報道の自由は暴政の犠牲となった」と憤りを込め、読者と香港を「永遠に愛する」と結んだ。
1995年に創刊され、共産党批判からゴシップまでタブーを恐れない紙面作りで知られた。昨年6月の国安法施行後も民主派支援の論調を貫いた。
中国政府は「売国奴」と呼んで敵視してきた。創業者の黎智英(れいちえい)氏は4月に有罪判決を受けて服役している。
今月には他の幹部も相次いで逮捕され、運営会社は法人として初めて国安法違反罪で起訴された。新聞社を葬り去ろうとする当局の意図は明らかだった。
体制への異論を許さない中国式の言論統制を香港に持ち込む暴挙である。
国際都市としての香港の信頼は決定的に損なわれた。言論の自由があればこそ、中国と外部を結ぶ情報の窓口として存在感を発揮できた。共産党体制の内実を知る貴重なルートだった。
国際金融センターの地位も揺らぐ。欧米企業を中心に不安が広がり、香港から撤退する動きが加速している。
国安法の施行によって、社会のあらゆる領域で「中国化」が進む。三権分立は否定され、「愛国者」であることが住民の政治参加の条件となった。
天安門事件の追悼集会に続き、7月1日の香港返還記念日に毎年実施されてきた大規模デモも今年初めて中止となる見込みだ。民主化を求める手段はことごとく封じられようとしている。
蘋果日報の危機を知った多数の人が買い求め、最後の新聞は通常の10倍以上となる100万部が発行された。言論の自由を支えようとする香港市民の強い意思表示である。
抑圧下にあっても自由の価値を信じる人々を、国際社会は孤立させてはならない。
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