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謎の連続殺人事件「ゾディアック事件」の暗号文が51年間越しに解読される、その全容とは? - GIGAZINE

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1968年~1974年にかけて、アメリカ・カリフォルニア州で少なくとも5人が殺害された未解決事件「ゾディアック事件」で、犯人が残した暗号文である「340暗号文」が51年越しに解読されたと報じられています。

Zodiac ‘340 Cipher’ cracked by code experts 51 years after it was sent to the S.F. Chronicle - SFChronicle.com
https://www.sfchronicle.com/crime/article/Zodiac-340-cypher-cracked-by-code-expert-51-years-15794943.php

ゾディアック事件とは、1968年に若い男女2人がサンフランシスコ近郊で射殺されたのを皮切りに、少なくとも合計5人が殺害され2人が負傷した連続殺人事件です。記事作成時点でも捜査が進行中の未解決事件であるゾディアック事件は、犯人が謎めいた記号で記された暗号文でメッセージを残すなどの奇怪な特徴から、2007年に公開された映画「ゾディアック」をはじめとするさまざまな映画やドラマのモチーフとなりました。

ゾディアック事件の犯人と目される、通称「ゾディアック」(英語で黄道帯の意)と呼ばれる男は、アメリカの日刊紙サンフランシスコ・クロニクルなどの報道機関に複数の手紙を送っており、そのうちの1つは408個の記号で書かれていたことから「408暗号文」と呼ばれています。

この408暗号文は、1969年に高校教師であるドナルド・ハーデン氏ら夫妻により解読されており、その内容は「私は人を殺すのが好きだ。なぜなら、森で野生の動物を狩るより楽しいから」「私が死ぬと私はパラダイスで生まれ変わり、私が殺した人は私の奴隷となる」といったものでした。

さらに、ゾディアックは340個の記号で構成された「340暗号文」も残していますが、これは408号暗号文よりもはるかに複雑な内容だったため、FBIや暗号の専門家などが解読に取り組みながらも、これまでその内容は不明でした。


しかし、2020年12月5日にオーストラリアの数学者であるサム・ブレイク氏ら3人のアマチュア暗号解読チームにより、340暗号文がついに解読されたと報じられました。

暗号文の内容や解読までの経緯は、解読チームの一員であるデービッド・オランチャク氏がYouTubeに投稿した以下のムービーを見るとよく分かります。

Let's Crack Zodiac - Episode 5 - The 340 Is Solved! - YouTube

今回、340暗号文の解読に成功したのはブレイク氏と……


ベルギーの倉庫管理者でありながら、優れたプログラマーでもあるイアール・バンアイケ氏、そしてオランチャク氏の3人です。


3人は、340暗号文を解読するにあたり専用の解読ソフト「AZdecrypt」を開発し、無償公開しています。


今回、オランチャク氏らが340暗号文の解読に使ったのも、このAZdecryptです。


いつものように、ブレイク氏らと暗号解読に取り組んでいたオランチャク氏は、AZdecryptが導き出した以下の解読文に目をとめます。これはAZdecryptが出力した65万通りの解読例の1つで、一見すると意味不明なのでほとんどの人ならスルーしてしまうところです。


しかし、よく見ると「HOPE YOU ARE(あなた方に望む)」「TRYING TO CATCH ME(私を捕らえようとしている)」「OR THE GAS CHAMBER(またはガス室)」といった、意味のあるフレーズも混じっています。意味をなさない文字列を何年も見てきたオランチャク氏らにとって、これは大きな前進だったとのこと。


暗号を完全に解読するにあたり、ブレイク氏は340暗号文を3つの段落に分けました。


この3つの段落を、ブレイク氏は以下のような「ある記号とその下の行の2文字ずらした記号は関係がある」というルールに当てはめて読み解いていきました。


ブレイク氏が使ったルールを実際の暗号文で示すと、以下のようになります。


このルールにのっとって並べ替えた最初の段落をAZdecryptに入力しても、意味のある内容は得られませんでした。しかし、AZdecryptには「HOPE YOU ARE」などすでに意味が分かっているフレーズを固定して残りの部分を解読できる機能があります。この機能を活用してさらに解読を進めると……


「TV SHOW(テレビ番組)」など、意味を持った新しいフレーズが浮かび上がってきました。


このことが分かったオランチャク氏は、思わずイスからひっくり返ってしまったとのこと。


なぜなら、ゾディアックはかつてテレビ番組に電話出演すると宣告したことがあったからです。


しかも番組では、実際に犯人を名乗る人物から電話がかかってきて「ガス室には行きたくない」と話していました。これにより、340暗号文から解読された「テレビ番組」や「ガス室」といったフレーズが単なる偶然ではない可能性が非常に濃厚となり、その後の解読の手がかりとなりました。


こうして、オランチャク氏らが解読した340暗号文の全文は以下のとおり。スペルミスなどがありますが、日本語に訳すと、「私を捕まえようとしている諸君が大いに楽しんでくれることを願っている。しかしテレビに出たのは私ではない。私との違いは、私がガス室を恐れていないという点だ。なぜなら、それは私をすみやかにパラダイスに送ってくれるからだ。私はすでに、私のために働くには十分な奴隷を所有している。他の者たちはパラダイスに到達しても何も持っていない。だから死を恐れる。だが私は恐れない。なぜなら、私は私の新しい人生を知っているから。私の人生は楽園での死により、裕福なものになるだろう」となります。


オランチャク氏らによる暗号解読を受けて、FBIはサンフランシスコ・クロニクルを通じて「FBIはゾディアック事件の暗号が民間人によって解読されたことを認識しています。当該事件は、地元の法執行機関との協力により現在も捜査が進められています」との声明を発表しました。

また、FBIサンフランシスコ事務所の広報担当者であるキャメロン・ポーラン氏は「ゾディアック事件は、北カリフォルニア全域のコミュニティを恐怖に陥れました。何十年がたとうとも、我々はこれらの残忍な犯罪の犠牲者のため、正義を追求し続けていきます。捜査が現在進行中であり、また被害者やそのご遺族への配慮のため、現時点ではこれ以上のコメントは差し控えます」と話しました。

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