
激化するガザ地区の「ハマス」とイスラエルとの軍事衝突。だが、そもそもハマスはなぜ今回、イスラエルを攻撃しはじめたのか? 『パレスチナの脱植民地化─アンチコロニアルとポストコロニアルのあいだのハマス』(未邦訳)という本を出版したばかりのハマス研究者が読み解く真相とは──。 【画像】空爆されたガザの瓦礫のなかに立つ子供たち パレスチナ人家族が東エルサレムで強制追放されたことに対する抗議運動が起こると、イスラエルは、パレスチナのイスラム原理主義組織「ハマス」が抗議を「激化」させたと非難した。 だがじつのところ、ハマスは抗議運動と何の関係もなかった。若きパレスチナ人たちが抗議していたのは、土地所有をめぐる法と裁判所を使ってパレスチナ人を追い出し、エルサレムをユダヤ人の首都に(再び)作り変えようとするイスラエルの組織立った目論見に対してだった。 5月10日、ハマスはイスラエルに向けてロケット弾を発射しはじめた。表向きは、エルサレムのアルアクサ・モスクにいたパレスチナ人礼拝者たちをイスラエル警察が攻撃したことに対する報復としてだ。 イスラエルはこれに対し、ガザ地区への大規模な空爆で応じ、その週の終わりには地上砲撃も開始した。 状況は日増しに悪化し、5月17日夜までに死者数は212人と急増、そのうちの61人は子供だ。 だが、エルサレムやイスラエル中、およびイスラエルが占領するヨルダン川西岸で起こった抗議からガザをめぐる今回の紛争へという流れのなかで、「過激派分子」や「テロリスト組織」がこうした抗議を駆り立てているとのイスラエルの主張を裏づけるものはない。 さらに言えば、パレスチナ人の抗議者たちは、ハマスの参戦を一様に歓迎しているわけでもない。 ではなぜ、ハマスはロケット弾を連射しはじめたのか? 答えは、ハマスの抵抗組織としての長い歴史と、支配者としての役割が政治的脅威に直面しているという認識にある。
ハマスの野望
1987年に、ハマスが「ムスリム同胞団」パレスチナ支部を母体に創設されて以降、アナリストやメディア報道はおもに、ハマスの軍事部門に注目してきた。 ハマスにとっては社会奉仕や慈善事業も極めて重要な焦点だった。一方で、ハマスにはイスラエルに軍事的に対峙する能力も意欲もあり、それによって世俗的なライバル「ファタハ」と一線を画していた。 だがハマスの切なる願いは、パレスチナの抵抗運動を主導することだ。 ハマスが喧伝する対外的なイメージがある。それは、イスラエルのガザ攻撃に対するパレスチナの軍事報復がおもにハマスの旗の下で行われているというものだ。パレスチナの「イスラム聖戦」などほかの組織が主体的に参戦しているにもかかわらずだ。 2018年、ガザに住む無党派のパレスチナ難民が「帰還の大行進」と称して、1948年の「ナクバ(破局)」で追放された土地に帰還する権利を訴える平和的なデモ行進をした。 ハマスはすぐにその行進を支持し、やがては主導権を握ることになった。だがハマスは、こうしたデモによって、その主導権や戦術に頼らないパレスチナの抵抗運動の可能性が示されたのではないかとも懸念した。 イスラエルのスナイパーたちは200人以上の抗議者を殺害し、何千人もの負傷者も出た。それが、ハマスの抵抗戦略に対する疑問を呼び起こすことになったのだ。 この春も、ハマスはイスラエルと戦う意欲を示した。4月24日、ハマスの軍事部門「カッサム旅団」が声明を出し、アルアクサ・モスクにパレスチナ人が入るのを制限したイスラエルの方策を糾弾し、「占領下エルサレムにいる革命家たちを守る覚悟」があると述べた。 5月5日、カッサム旅団のモハメド・デイフ司令官はこう警告した。 「(東エルサレムの)シェイク・ジャラ地区のわが同胞に対する卑劣な攻撃がやまないならば、われわれ抵抗組織は傍観してはいられない。イスラエルの占領は高い代価を払うことになろう」 5月10日、イスラエル治安部隊がアルアクサ・モスクに突入、ハマスの参戦はそこでおそらく不可避となった。ハマスが大衆蜂起の最前線に留まるためだ。
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