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焦点:消耗激しいウクライナ軍、戦争長期化で動員に不公平感も - ロイター (Reuters Japan)

[キーウ 28日 ロイター] - ウクライナで人事マネジャーの仕事をしているアントニーナ・ダニレビチさん(43)の夫は、昨年3月に軍に入隊して以来、休暇を取得して自宅に帰ることができたのは合計わずか25日程度しかない。2人の娘は、父親にほとんど会えないまま育っている。

ダニレビチさんは首都キーウの自宅で受けた取材で「私たちはウクライナに勝利してほしい。でもいつも同じ人たちの努力で成し遂げられるのは望まない」と語り、現在兵役に就いている人々を交代させて、彼らに休息を与えるべきだと自分は理解できるが、それが分からない人もいると嘆く。

また、留守を預かる女性たちはたくましくならざるを得なくなったとはいえ、「一体どんな犠牲を払って強くなったのだろうか」と問いかけた。

ロシアとの戦争が2年目に突入している今、ダニレビチさんだけでなくウクライナ各地の家族が、戦争は当初予期したよりもずっと長引き、犠牲も大きくなるばかりか、勝利の保証もないという厳しい見通しに直面している。

そしてこの秋、ダニレビチさんを含む2万5000人が、ゼレンスキー大統領宛ての嘆願書に署名した。求めているのは、兵役期間を無制限にせず、軍が退役期日を明確に示すことだ。最近数週間では、キーウの主要な広場でそうした要求を掲げた50─100人のデモが2回発生し、ウクライナ軍の消耗の激しさや残された家族の負担の大きさが浮き彫りになった。

夏場にウクライナ軍が開始した大規模な反転攻勢は、今のところ戦局の逆転につながっていない。ウクライナとロシアの両軍は、各戦線でおおむねこう着状態に陥っており、ウクライナに対する外国の武器支援もこれまで通りの規模で実施されるかどうか不透明になってきた。

ウクライナにとっては、米国や他の同盟国による多額の軍事支援が頼みの綱だが、手元の武器弾薬は枯渇しつつあるのに、各国は従来のレベルでの支援を継続する熱意を失ってきている。

こうした中でダニレビチさんらの要求を受けて厳しい選択を迫られているのがウクライナの戦争計画担当者だ。戦死者が着実に増えている以上、より強大なロシアを倒すためには絶え間なく新兵を戦場に送る必要がある半面、疲弊する経済を何とか切り盛りするための要員も確保しなければならないからだ。

ウクライナでは現在、当局が動員できる年齢は27歳から60歳までで、18歳から26歳は招集対象ではなく、あくまで志願者のみを入隊させている。

これまで同国は予備役を含めた総兵力を100万人前後と公表し、兵役対象年齢の国民が外国に渡航するのを禁止している。個別の動員計画の人数や戦死者は明らかにしていない。

<徴兵逃れ>

ウクライナ軍総司令官は今月、ロシアに有利な消耗戦に引きずり込まれないようにするための戦略として予備役の拡充や、電子戦、無人機、対砲兵などの分野での能力強化を挙げた。同時に、徴兵逃れを許している法の抜け穴をふさぐことも提言した。

ただ徴兵手続きに関しては、当局が動員したい男性を無理やり連行したり、脅したりする様子がソーシャルメディアに投稿され、国民の批判を浴びている面がある。

当局者が徴兵の「目こぼし」をするために賄賂をもらっている幾つかのケースも多くの国民を怒らせ、ゼレンスキー氏が担当幹部を更迭する事態になった。

ルーマニア国境沿いのティサ川では、かつてタバコの密輸を取り締まっていたウクライナの国境警備隊が、今は徴兵を逃れて国外に出て行く人々に目を光らせている。

国境警備隊はロイターに、これまでにルーマニアに渡ろうとした約6000人を拘束したと明かした。渡河中に溺死した人も少なくとも19人いたという。

<対応策>

ウクライナ議会は、合法的に招集から外れる手段として30歳以上の人が高等教育機関を利用するのを禁止する法案を審議している。

教育相による9月のフェイスブックへの投稿によると、ロシアがウクライナに侵攻した昨年、大学生として登録された25歳以上の人数は前年比で5万5000人も増加したという。

一方、西側諸国からは、ウクライナは徴兵対象年齢を引き下げるべきだとの声が出ている。

ウォレス前英国防相は、前線で活動するウクライナ軍兵士の平均年齢が40歳を超えており、動員を見直す時期だと指摘。英紙テレグラフへの寄稿で「将来ある若者を温存したいというゼレンスキー氏の願いは分かる。だがロシアがひそかに総動員に踏み切りつつあるというのが事実だ」と述べた。

ゼレンスキー氏の側近議員の1人は23日、議会が動員計画の改善と復員手続きに関する法案を年内に策定する方針だと語った。この法案は、丸2年ずっと交代なしで戦闘に従事する兵士の扱いや、捕虜となって帰還した兵士の復員方法に加えて「徴兵年齢に関するさまざまな事項」にも対応するという。

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