「日本がドイツに圧力をかけ、ロビー活動を行った」と報じるメディア
ドイツ・ベルリンのミッテ区に韓国系市民団体が設置した元従軍慰安婦を象徴する「平和の少女像」の撤去を巡り、韓国内では再び反日感情が高まっている。撤去通知を踏まえ、尹美香(ユン・ミヒャン)氏など韓国国会議員113人が「少女像を守ってほしい」と駐韓ドイツ大使館に書簡を送った。抗議デモを行い、裁判所に撤去決定の効力停止を申請。これが奏功してか、地元自治体は13日、裁判所の判断が出るまでの間、設置を認めることを発表した。
ミッテ区役所は、10月14日までに銅像を撤去するよう市民団体に通告したが、銅像を設置した市民団体「コリア協議会」と韓国メディアは、「日本がドイツに圧力をかけ、ロビー活動を行った」と主張している。
憶測に過ぎない、こうした内容が韓国内に拡散して韓国国民の「反日DNA」を刺激し、青瓦台(大統領府)のホームページの国民請願掲示板には少女像撤去関連の日本を非難する請願が掲載され、これに同意する数が日増しに増えている。

コリア協議会は日本政府を非難すると同時に、ベルリン裁判所に銅像撤去命令執行停止に対する仮申請を行っている。
韓国内でも無名のコリア協議会は、2017年から数回に亘ってドイツでの少女像設置を試みてきた。
コリア協議会のホームページに掲載された情報によると、「韓国の歴史や政治、社会、文化に関心のある人々に情報を提供し参加できます」と紹介し、出版、映画制作や美術展示、舞台などのビジネスを行っているという。
表向きは平凡な在外韓国人団体に見えるコリア協議会が、いかにしてベルリンに少女像を設置して話題になったのだろうか。その背後には、あの団体がいた。

正義連・尹美香・コリア協議会、長年に亘る連帯関係
コリア協議会のホームページはドイツ語版と韓国語版、英語版で構成されているが、ドイツ語版と韓国語版では掲載内容が異なる。
韓国語版にはコリア協議会に関する紹介と元朝鮮人従軍慰安婦に関する内容が簡略に掲載されているが、ドイツ語版は編集したドイツ語の記事や出版物を販売するメニューなどで構成される。

記事はドイツ内に設置した少女像に関する内容がほとんどであり、中でも一人の女性の写真が目を引く。過去の慰安婦関連活動を主導し、現在は慰安婦関連の募金額の横領や背任、詐欺など8件の容疑で起訴され、韓国内で非難を受けている尹美香氏だ。
尹美香氏は今年4月の総選挙で当選した現職の国会議員であり、過去には慰安婦の寄付金に対する会計不正、補助金流用疑惑が物議を醸している正義記憶連帯(正義連)の元理事長であった。
コリア協議会のホームページだけでなく、SNSにも尹美香氏と正義連の活動が写真と共にアップされており、コリア協議会と尹美香氏、正義連は、以前から連帯して慰安婦関連の活動を進めてきたことがわかる。

「親日メディアと反政府団体が、寄付金を盗用した」
実際に正義連はホームページに'国際連帯活動の内訳'の一つで、ドイツ内でコリア協議会と共に慰安婦被害者をドイツに招待してイベントを行っていると堂々と紹介している。
特に尹美香氏は、2017年3月にドイツ南部のバイエルン州のレーゲンスブルク近くのヴィーゼントにあるネパール・ヒマラヤパビリオン公園内に設置された最初の少女像についても、コリア協議会を通じて設置方法などに関与していたことがわかった。
その上、コリア協議会のドイツ語版ホームページに掲載されている尹美香氏の韓国内での疑惑に関する記事では、「親日メディアと反政府団体が、寄付金を盗用した」と勝手な主張した尹美香氏がトップページを飾っている。
コリア協議会の記事通りだとすれば、尹美香氏を慰安婦の募金の横領や背任、詐欺などで起訴した韓国検察、そして「30年間、正義連と尹美香氏に騙されて利用された」と寄付金の流用疑惑を最初に提起した慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)氏、正義連と尹美香氏宛に寄付せず、直接慰安婦被害者たちに募金を渡して助けようと主張する韓国国民と政治家全員が親日であり、反政府行為をしていたことになる。
「日本軍はアジア・太平洋地域で女性を性奴隷として強制的に連行」と刻まれて
10月11日、正義連は今回のコリア協議会が設置した少女像の撤去についても、日本を非難する発言を行っている。
「市民の合意下で建立された少女像に対する日本政府と右翼団体の撤去要求は、ベルリン市民の努力をないがしろにする」とし、ドイツ政府の措置は不当だと主張した。
また、日本とドイツが慰安婦問題を解決するための努力を無視し、表現の自由を侵害したと指摘、これを国連にも告発すると警告している。
おそらく正義連は、ミッテ区がなぜ少女像撤去を決めたのか詳しくは知らないようだ。
コリア協議会が、戦時下の女性への性暴力に抗議の意思を示す「芸術作品」として少女像の設置を申請。ミッテ区は普通の「芸術作品」として1年間の設置を許可した。
しかし少女像に刻まれた碑文には「第二次世界大戦時、日本軍はアジア・太平洋地域で女性を性奴隷として強制的に連行した」とドイツ語で書かれている。
全ての戦争で被害者となった女性ではなく、日本軍を非難する目的が強い内容であり、ミッテ区はこの銅像が芸術作品として政治的・国家的問題を引き起こすと判断し、コリア協議会が碑文の内容を事前に申告しなかったこともあり、撤去するしかないと説明した。
だとすれば、碑文に尹美香氏と正義連の悪行も一緒に刻むのはいかがだろうか。コリア協議会のホームページではビジネスの一環として「偏った偏見を克服できる討論を同時に行う」と紹介している。
コリア協議会が刻んだ碑文の内容だけを読めば、残念ながら討論を何度行っても偏見を克服することはできないだろう。
偏向した政治的目的の強い団体、日本政府が乗り出す必要があるのか
コリア協議会のSNSで注目すべき点は、同団体が朴槿恵(パク・クネ)前大統領に対して非常に否定的だというところだ。
同団体のフェイスブックやツイッターには朴槿恵への退陣要求当時のデモの写真が多数掲載されている。
その一方で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領にはとても友好的だ。文在寅大統領の当選当時、「真の民主主義が湧き出ている」「日韓慰安婦問題の再交渉」「朴槿恵厳重処罰」といったタイトルの写真を掲載した。
その上、北朝鮮に対しても肯定的なスタンスで「朝鮮半島平和」「米韓ワーキンググループを解体せよ」などの内容が書かれたプラカードを掲げた慰安婦デモでの活動写真を掲載した。
頭上で依然として核兵器を開発中であり、今年も数回弾道ミサイル発射実験を強行し、党創建75周年を記念するパレードで新型兵器を披露し、周辺国に脅威を与えている北朝鮮。そこから遠く離れたドイツは緊張とは無縁に暮らしているだけに、こうした呑気な行動ができるのだろう。
偏向した見方で政治色が強い団体の活動に、日本政府は官房長官と外相まで出てきて問題解決に動く必要があるのだろうか。
むしろ、同団体にスポットを当てることで反日への口実を与えるだけ。
法に任せて毅然と対処するのがより賢明だろう。
韓永(ハン・ヨン)
検察担当記者などを経て現在フリー。
週刊新潮WEB取材班編集
2020年10月15日 掲載
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