
【ワシントン=黒瀬悦成】米紙ニューヨーク・タイムズ(13日付)は、キューバや中国に駐在していた米国の外交官や軍関係者、情報機関員らが脳に謎の損傷を受ける事例が約5年前から相次いでいる問題で、被害者の数はこれまでに確認された約60人よりもはるかに多い130人以上に達していることが分かったと報じた。
複数の米政府関係者が同紙に語ったところでは、新たな被害者は欧州やアジアで新たに確認されたとしている。具体的な国名は明らかにしていない。
同紙が伝えた新たな事例では2019年、外国に駐在する米軍将校が車を運転して交差点に進入した際、吐き気と頭痛に襲われ、後部座席にいた2歳の息子が泣きだしたが、交差点から離れると吐き気が収まったという。
また、昨年12月から約2週間前にかけ、海外で勤務していた少なくとも3人の中央情報局(CIA)の職員が重大な体の不調を訴え、米国内の医療施設で治療を受けたとしている。
トランプ前政権とバイデン政権は一連の事態を受けて詳細な調査を実施しているが、バイデン政権は現時点で何が原因かは断定していない。ただ、一部の国防総省当局者は、19年の事例はロシア軍情報機関「参謀本部情報局」(GRU)が関与した可能性が非常に高いと指摘。他の事例でもロシアの関与を示す証拠が浮上しているという。
非営利団体「米国科学アカデミー」は昨年12月、一連の事例について、被害者らは何者かにマイクロ波放射を受けた可能性が高いと指摘。一部の米当局者もマイクロ波や指向性エネルギーが使われたとの見方を強めているとしている。
国家情報会議(NSC)は同紙に、被害事例のほとんどは米国外で起きていると説明。ただ、外国への渡航歴のない少なくとも2人のホワイトハウス職員が昨年と今年、勤務先の近くやワシントン近郊で同様の被害に遭ったことも判明しているという。
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