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ロシア産ガス、「ルーブルで払わなければ供給停止」 プーチン氏が大統領令に署名 - BBCニュース

マイケル・レース、ビジネス担当記者

Gas pipeline in Germany

画像提供, Getty Images

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は3月31日、「非友好国」に指定した国への天然ガスの輸出について、ロシア通貨ルーブルでの支払いを求める大統領令に署名した。代金をルーブルで支払わない場合はガス供給を停止するとしてる。ロシアは、ウクライナ侵攻をめぐる対ロ制裁への対抗措置として、アメリカや日本を含む48の国と地域を「非友好国」に指定している。

この大統領令は、ロシアから天然ガスを購入する国に対し、「ロシアの銀行にルーブル建ての口座を開設」することを義務付けるもの。

プーチン大統領は、「誰も我々にタダで物は売らないし、我々も慈善事業をするつもりはない。つまり、既存の契約は停止される」と述べた。

プーチン氏のこうした要求は、西側諸国の制裁で打撃を受けているルーブルの価値を押し上げるための試みとみられている。

ロシア産ガスを購入する外国人は、ロシア国営企業ガスプロム傘下の銀行ガスプロムバンクに口座を開設し、ユーロか米ドルを振り込まなければならなくなる。ガスプロムバンクはこれらの外貨をルーブルに両替し、ガス代金の支払いに充てる。

ルーブル建て支払いは4月1日の輸出分から適用される。しかし、欧州の買い手からその代金が支払われるのは5月中旬になると、英オックスフォード大学エネルギー研究所の研究員、ジャック・シャープルズ博士はBBCに語った。

このことは、ガス供給が直ちに脅かされるわけではないかもしれないことを示唆している。

ルーブルへの切り替えはロシアの主権を強化するためだと、プーチン氏は説明。西側諸国がそれに応じるなら、ロシアはすべての契約における義務を守るだろうとした。

ドイツはプーチン氏が発表した支払い通貨の変更は「脅迫」に等しいとしている。

ロシア産原油・天然ガスに大きく依存

ロシアがウクライナに侵攻して以降、西側諸国はロシアに対して経済・貿易制裁を発動している。しかし欧州連合(EU)は、加盟国がロシア産原油や天然ガスに大きく依存していることから、アメリカやカナダのような輸入禁止措置は導入していない。

EUはガスの約40%、原油の約30%をロシアから調達している。そのため供給が途絶えた場合、代替を確保するのは簡単ではない。

一方でロシアは現在、EUへのガス輸出で1日当たり4億ユーロ(約542億円)を得ており、この供給をほかの市場にまわすことはない。

「大規模なエスカレーションの恐れ」

複数のアナリストは、ロシアがEU加盟国へのガス供給を停止して「対決を迫っている」とし、「冷戦中、最も緊迫した状況下ですら行われなかった大規模なエスカレーション」が起こり得ると指摘した。

「ロシアの財源にまた大きな経済的打撃を与えることになるだろう」と、市場調査会社フィッチ・ソリューションズのアナリストたちは付け加えた。

ロシアが発表したガス代金の新たな支払いメカニズムが、ユーロでの支払いを全面的に禁止するものなのかどうかもわかっていない。

西側の企業や政府は、ユーロや米ドルで設定されている既存の契約に反するとして、ガス代金のルーブル建て支払いを求めるロシア側の要求を拒否している。

ドイツのオラフ・ショルツ首相は3月30日、ドイツ企業は契約に定められた通りユーロ建て支払いを継続すると述べた。

銀行および資産管理会社インヴェステックの石油・ガス研究責任者、ネイサン・パイパー氏はBBCに対し、プーチン氏の動きは経済的圧力を「欧州に戻す」試みだと指摘。外国為替市場でのルーブルの需要が高まればその価値を押し上げる可能性が高いとした。

「一方で、長期的にみれば、ロシアは信頼できるガス供給者であり続ける必要がある。そのため、実際にガスの供給を制限するかどうかは不透明だ」と、パイパー氏は付け加えた。

「とはいえ、そういうリスクがあるだけでイギリスや欧州のガス価格は過去最高値に迫り、10年平均の6倍に達している。これは消費者が支払う光熱費の急騰につながる」

A helicopter flies over the Nordstream gas pipeline terminal prior to an inaugural ceremony for the first of Nord Stream's twin 1,224 kilometre gas pipeline through the Baltic Sea, in Lubmin November 8, 2011.

画像提供, AFP

オックスフォード大学エネルギー研究所のシャープルズ博士は、双方が状況に順応し、貿易を中断させることなく続けていくこともできるとしつつ、反対に、一方または双方が契約違反を主張して事態をエスカレートさせる可能性もあるとしている。

「事態がエスカレートして、一方または双方が仲裁を求めるような状況になっても、ガス供給が続くことを望むが、供給が停止する可能性は排除できない」

ドイツとオーストリア、緊急事態計画を発動

ガス供給の約半分と原油供給の3分の1をロシアに依存しているドイツは、国民と企業に対し、供給不足に陥ることを想定してエネルギー消費を抑えるよう求めている。ガス供給の約40%をロシアから輸入しているオーストリアは、国内市場の監視を強化している。

ガスに関する既存の緊急事態計画では、起こり得るガス供給不足に備えるため、3段階の措置を設けている。ドイツとオーストリアが発令した「早期警戒段階」はその第1段階にあたる。最終段階になると、政府はガスの配給制を導入する。

ロシアのガスプロム社からガス供給の90%を輸入するブルガリアは、供給停止に備えてガス貯蔵容量を2倍近くに増やす計画の一環として、地下掘削事業への入札を開始した。

ロシアからのガス輸入量が5%未満のイギリスは、供給停止による直接的な影響は受けないとみられる。ただ、欧州での需要増加に伴う世界市場での価格上昇には直面するだろう。

英政府はロシア産ガスのルーブル建て支払いを行う予定はないとしている。

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