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コラム:巨大ハリケーン「アイダ」、GDPで換算できない長期的悪影響 - ロイター (Reuters Japan)

[ニューヨーク 31日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 大型ハリケーン「アイダ」が米本土に上陸した8月29日の時点で、風速は時速150マイル超に達し、これまで米国に襲来した中で最大のハリケーンの1つとなった。上陸地点だったルイジアナ州だけで、8月31日朝に停電していた家庭や事業者は推計100万件を上回り、一部は電力復旧に何週間もかかる可能性がある。米国を襲った過去のハリケーンの経緯を踏まえれば、この災害は米経済成長には影響はないと推測できる。だがそうした見方では、もっと大きな構図がほとんど視界に入らなくなる。

大型ハリケーン「アイダ」が米本土に上陸した8月29日の時点で、風速は時速150マイル超に達し、これまで米国に襲来した中で最大のハリケーンの1つとなった。写真は30日、ルイジアナ州ケナーで撮影(2021年 ロイター/Marco Bello)

2013年のある経済論文は、やはり米南部に大被害を与えた05年のハリケーン「カトリーナ」などの大規模自然災害を研究。これらが革命など急激な政治変革でも引き起こさない限り、その後の国内総生産(GDP)には重大な影響を与えないとの結論を導き出した。実際、米商務省経済分析局によると、カトリーナが直撃したニューオリンズの総生産も08年までに回復した。結局人々は仕事に復帰し、堤防をはじめとする市内のインフラは強化され、住宅は再建された。

しかしそうした数字は、被害を完全に反映しているわけではない。大嵐が来れば、住民や地元の事業者は家や車、資本財を失う。保険会社は請求書の一部を支払ってくれるが、だれもがカバーされるわけではない。ほとんどの保険証券は被害金額全てを支払ってはくれない。カトリーナでは政府が見積もった被害額は物価調整後で1600億ドル超だったが、保険でカバーされたのは約半分にとどまった。結果として直接的な痛手を受けるのは、人々の資産だ。

今回は、より一時的かもしれないが、痛みをもたらし得る特有の間接コストや隠れコストがある。米労働省のデータに基づくと全米の失業率は5.4%まで下がっており、建設従事者は既に引く手あまただ。業界団体の米建設・請負業協会(ABC)は、需要を満たし続けるには業界が今年だけであと43万人を雇用する必要があると訴えている。確かに労働力は移動可能だから、ルイジアナまで州外から出向くことはできる。ただ一時的な労働者が、賃金を上げてもらえてないと求人に応じなくなる可能性は生じる。現に今年の初めごろ暴風雪と凍結に襲われたテキサス州では配管工が不足し、そうした現象が起きた。

さらに最も大きなコストの一部は、単純に計測不能かもしれない。ルイジアナの被害復旧に使われる財政資金が増えるほど、米国各地では、気候変動に耐えるための、より環境にやさしい社会を促進するため長期間維持すべきインフラの拡充予算が減ることになる。米国土木学会が今年試算したところでは、インフラ整備に必要な金額に対して計画されている支出の不足分は、2039年までで既に5兆6000億ドルを超える。議会上院が最近承認した1兆2000億ドル規模のインフラ投資法案でこの穴の一部は埋まる。しかし、必要な水準には程遠い。そこに加わるルイジアナの復旧復興で、全米の将来のインフラ投資余力はさらに逼迫する形になるのだ。

●背景となるニュース

*大型ハリケーン「アイダ」が上陸した米ルイジアナ州では、被害の復旧作業が続いている。アイダは同州を襲ったハリケーンとしては過去最大の1つ。8月31日には熱帯暴風雨になっている。

*電力会社のデータを集計しているパワーアウテージによると、8月31日午前の段階で停電に見舞われたルイジアナ州の家庭や事業者は100万件を超えた。地元電力会社エンタジーは30日時点で、一部地域の住民が数週間にわたって電気のない生活を強いられる恐れがあるとの見方を示している。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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