<米中の激しい対立のなかでうまくバランスをとってきたメルケルと違い、連立政権を率いる次の指導者は、人権にうるさい緑の党やリベラルの声も聞く必要がある>
アンゲラ・メルケルの後継者として、オラフ・ショルツ財務大臣が最有力視されている。彼が次期首相となった場合、超大国同士で緊張が高まっているアメリカと中国のどちらにつくか、ドイツは厳しい選択を迫られるかもしれない。
9月26日に投開票が行われたドイツ連邦議会選挙(総選挙)の結果、中道左派の社会民主党(SPD)が僅差で勝利をおさめ、党首のショルツは次期政権を担う可能性が最も高くなった。アンゲラ・メルケル首相が所属する保守派のドイツキリスト教民主同盟(CDU)の党首で対立候補のアーミン・ラシェットは最後まで戦う予定だという。
メルケル政権下のドイツはこの二大国の間でうまくバランスを取ることができたが、ショルツの下ではどちらを支持するかについて、困難な選択に直面するかもしれないと、英王立国際問題研究所(チャタムハウス)欧州プログラムの責任者を務めるとハンス・クンドナニは本誌に語った。
アメリカの大統領に就任して以来、ジョー・バイデンは、民主主義国家と独裁国家の戦いというイデオロギー的な言葉でアメリカの対中政策を再構築した、とクンドナニは言う。
「ドイツや他の欧州の国々は、中国とアメリカのどちらに味方をするか選択を迫られるだろう。時がたつにつれ、その圧力は強まっていく」
アメリカとの微妙な距離
これまでのバイデン政権は、『ノルドストリーム2』(ドイツとロシアが共同開発しているロシア産天然ガスをドイツに運ぶパイプライン)の件にしろ、今秋のメルケル辞任の直前に合意にこぎつけたEUと中国の『包括的投資協定』にしろ、「ドイツの行動をかなり大目に見てきた」と、クンドナニは言う。
「だが、アメリカが突然、イギリス、オーストラリアと組んでAUKUS(9月15日に発足が発表された新たな安全保障協力の枠組み)を発足させたことは、ある意味EU各国がアメリカと同調することにあまり熱心ではなかったことも原因となっている」
ベルリンに本拠を置くメルカトル中国研究所(MERICS)の上級研究員、アリアン・レイマーズによれば、ショルツは、基本的にメルケルと同じ道をたどりつつ、よりビジネス志向で実務的な中国政策を追求するかもしれない。
「だが(連立内閣を率いることになる)ショルツは、特に人権問題に関して、中国にきわめて批判的な緑の党やリベラルな党の立場を統合しなくてはなるだろう」と、レイマーズは本誌に語る。
「SPDはその宣言の中で欧米の同盟関係を『再開』させることを求めているが、ショルツ主導の連立政権は、アーミン・ラシェットが首相となった場合よりも、アメリカとの関係を重視しないだろう」と、彼女は指摘した。
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