イスラム原理主義勢力タリバンがアフガニスタンで実権を握って以降、中東のカタールがタリバンと西側をつなぐ「もの言う調停者」の役割を果たしている。イランとの友好関係で一時は同国と敵対する周辺のアラブ諸国から孤立したが、欧米のアフガン在留外国人の退避に協力し、タリバンには人権状況の改善を求めるなど、その独自外交路線をフル活用している。 タリバンの実権掌握後、アフガンからは計12万人超の在留外国人とアフガン人が退避したが、カタールは半数近い約6万人を受け入れ、第三国に向かうまでの間、彼らの生活を支えた。また、アフガンに技術チームを送り航空便の運航再開も支援し、9日にはカタール航空のチャーター便を派遣し、米欧の市民ら約200人を退避させた。 カタールのムハンマド副首相兼外相は12日にアフガンの首都カブールを訪問し、タリバン暫定政権のアフンド首相代行らと会談。「調停者」の立場を強調する同外相はタリバンに女性の権利保護を求める一方、アフガンを孤立させず、関与を続けることが重要であるとの考えを示した。 ペルシャ湾岸の小国カタールは国際社会で存在感を確保するため「調停外交」を推進。イスラム色の濃い統治を掲げ、2013年には国内へのタリバンの事務所開設を認めてアフガン和平交渉の舞台を提供してきた。他方で国内の空軍基地に米軍駐留を受け入れ、米国とも親密な関係にある。 しかし、カタールが、地域を不安定化させるイランとつながりを持っているとしてサウジアラビアやエジプトなどが反発し、17年にカタールと一時断交(今年1月に関係修復)した。 カタールを孤立させた「独自外交」を、今は西側が利用する構図だ。ロイター通信によると、13日にはフランスのルドリアン外相がカタールの首都ドーハを訪れ、同国のムハンマド外相と会談。ルドリアン氏は、カタールの協力で、アフガンに残る少数のフランス国民を国外退避させる準備を進めていると述べた。米英独の外相らも次々にカタールを訪問した。 しかし、人権問題などでタリバンがカタールの主張を受け入れなければ、調停は壁に突き当たる。仏メディアのフランス24は「カタールは今後、調停者という立場を注意深く管理しなくてはならなくなる」との識者の見方を伝えた。(カイロ 佐藤貴生)
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