ヨランデ・ネル(パレスチナ自治区ジェニン)、デイヴィッド・グリテン(ロンドン)、BBCニュース

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パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ジェニンの難民キャンプで3日、イスラエル軍とパレスチナ武装勢力との間で激しい銃撃戦があった。
イスラエル軍は3日未明にドローン(無人機)による空爆を開始した。ここ数年で最も大規模な作戦の一つとみられる。
パレスチナ保健当局は、これまでにパレスチナ人9人が死亡し、100人がけがを負ったとしている。ドローン攻撃で死んだ3人は全員10代後半の若者とみられ、武装勢力に所属している人も含まれていたとされる。けが人のうち20人は重体だという。
イスラエル軍は、ジェニンで死亡したパレスチナ人は武装勢力の関係者だとし、ジェニンが「テロの隠れ家」になっている状況を食い止めるとしている。また、作戦中に武装勢力の約50人を拘束し、武器と弾薬を押収したとした。
作戦の終了時期については、イスラエル軍は具体的な予定はないと説明。「数時間後かもしれないし、数日後かもしれない」とした。
パレスチナ側は、イスラエルの軍事行動を戦争犯罪だと非難した。
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ジェニンは、パレスチナ武装勢力の若い世代の拠点となっている。そうした世代は、パレスチナ自治政府の指導者の高齢化と、イスラエルによる占領地での規制に、根深い不満を抱えている。
イスラエル軍は、ジェニンにいるパレスチナ人がイスラエルを攻撃し、死者を出しているとして、ここ1年の間にジェニンを繰り返し襲撃している。ジェニンには、パレスチナの他の武装勢力も潜伏している。
2002年には、パレスチナの第2次インティファーダのさなか、イスラエル軍がジェニンに本格侵攻した。10日間にわたる激しい戦闘で、パレスチナの武装勢力と市民が少なくとも52人、イスラエル兵が23人死亡した。


今回の作戦開始から20時間以上たった3日の夜も、ジェニンでは数百人のイスラエル兵が動き回っていた。
頭上ではドローンの音がし、約1万8000人が密集して暮らす難民キャンプでは終日、銃声と大きな爆発音が響いた。同キャンプは現在、イスラエル軍が封鎖したとしている。
市街地の上空には、抗議行動で燃やされたタイヤから出る鼻をつく煙が立ちこめていた。数人の若いパレスチナ人がシャッターの降りた商店の近くに立ち、神経質そうに難民キャンプのほうを見つめていた。
イスラエル軍は電話回線と難民キャンプへの電力供給を遮断しており、状況を正確に把握するのが難しい。パレスチナの救急隊は、何十人もの負傷者のもとにたどり着くのに苦労している。

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難民キャンプの主な入り口付近にあるパレスチナの病院では、険しい空気が漂っていた。
ある男性はBBCに、「兄の友人に会っていた。近づいて少し言葉をかけたところで、彼が地面に倒れた。逃げようとしたら、銃弾2発を食らった」と話した。
別の男性は、難民キャンプで「大虐殺」があったと説明。「子どもや民間人がいるが、外に出られないようにされている」、「電気は止められ、道路はすべて掘り返された。キャンプは破壊される」と話した。
医療慈善団体「国境なき医師団」のヨヴァナ・アルセニェヴィッチ氏は、銃撃や爆発物の破片による負傷者が90人以上、病院に運ばれてきたと話tあ。
イスラエル軍は、正確な情報に基づいて行動しており、市民に危害を加える意図はないとした。だが、銃撃戦には多くの人が巻き込まれている。
同軍は3日夜、パレスチナ人の家族約500組に対し、難民キャンプから出ることを許可した。家族らの中には、降伏のジェスチャーとして両手を上げる人や、にわか作りの白旗を振る人もいた。
一部の男性や10代少年たちがイスラエル兵に呼び止められて引き戻されたと、BBCに話す人もいた。

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ドローンによる空爆は最初、イスラエル人を攻撃したパレスチナ人の隠れ家になっているとイスラエル軍が主張するアパートが標的とされた。同軍はこのアパートが、パレスチナ武装組織「ジェニン大隊」の「共同作戦司令部」として使われているとしている。ジェニン大隊には、武装組織「ハマス」や「イスラム聖戦(PIJ)」などの戦闘員が参加している。
イスラエル軍は「対テロ作戦」でドローンでの空爆を続けるとともに、旅団規模の部隊を展開したと説明。過去1年半で起きたイスラエル人を狙った攻撃約50件は、ジェニンから来たパレスチナ人によるものだとした。
パレスチナ武装勢力が難民キャンプ内から反撃に出ると、ジェニン大隊は「私たちは最後の一呼吸と銃弾まで(イスラエル)占領軍と戦い、あらゆる派閥や軍事組織と協力し、団結する」と表明した。
「必要な限り続ける」とイスラエル首相
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は3日夜、「テロリストの巣」に同国軍が入ったことを称賛。「民間人への被害を最小限に抑えながら」行動していると主張した。
そして、「私たちは静寂と安全を取り戻すのに必要な限り、この行動を続ける」とした。
パレスチナ自治政府のムハンマド・シュタイエ首相は、イスラエルの軍事行動に猛反発。「いま起きているのは、難民キャンプを完全に消滅させ、住民を移動させようとする試みだ」と述べた。
隣国ヨルダンは、イスラエルの行動を「明白な国際人道法違反」だと非難。一方、アメリカは「イスラエルの安全保障と、ハマスやパレスチナ・イスラム聖戦などのテロリスト集団から国民を守る権利」を支持すると表明した。
イスラエルのエリ・コーヘン外相は、軍事作戦をジェニン以外に拡大する計画はないと述べた。しかし、パレスチナ側の抗議は、すでにハマスが統治するガザ地区にまで及んでいる。ジェニンでの軍事行動が長引くほど、広い範囲で新たな危険性が高まる。
ヨルダン川西岸での暴力急増
ヨルダン川西岸ではここ数カ月、暴力事件が急増していた。
6月20日には、ジェニンをイスラエル軍が急襲し、パレスチナ人7人が死亡。その翌日には、ハマス所属の2人が、ジェニンから南に40キロメートルほどのイスラエルの入植地エリ付近で、イスラエル人4人を射殺した。
その後、近くの町トゥルムサヤで数百人の入植者が暴れ、パレスチナ人男性1人が射殺された。さらに同じ週、ジェニンのパレスチナ武装勢力の3人が、イスラエルのドローン攻撃で殺された。
今年はこれまでに、ヨルダン川西岸と東エルサレムで、パレスチナ人140人以上(武装勢力と民間人の両方)がイスラエル軍や入植者によって殺されている。ガザ地区の死者は36人に上っている。
イスラエルとヨルダン川西岸では、イスラエル人24人、外国人2人、パレスチナ人労働者1人が、パレスチナ人による攻撃または攻撃と見られる行為で死亡している。非番の兵士1人とイスラエル治安部隊員1人を除き、全員が民間人だった。
追加取材:ラシュディ・アブ・アルーフ(ガザ市)、ロバート・グリーンオール(ロンドン)
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