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アングル声上げるLGBTQの作家米教育現場の禁書に抗議 - ロイター (Reuters Japan)

[シアトル 4日 トムソン・ロイター財団] - 米国の作家、マイア・コベイブ氏は2019年にグラフィックノベル「ジェンダー・クィア」を出版した際、このような激動が待ち構えているとは思ってもいなかった。3年後の今、この作品は国内で禁書の指定が最も多い著作になっている。

 米国で昨年上半期に学校で規制された本のうち30%が、人種や人種差別に関するテーマを取り上げており、4分の1近くがジェンダーやセクシュアリティの問題に触れ、LGBTQ+が登場人物となっていた。写真はテキサス州シュガーランドで、禁止図書を読む読書クラブを創設した学生のアンドリュー・ルーさん(17)。読んでいるのは、禁書の申し立て対象としてやり玉に上げられることが多いトニ・モリスン著「青い眼がほしい」。4月12日撮影(2023年 ロイター/Callaghan O'Hare)

LGBTQ+(性的少数者)の権利擁護に対する保守派の反発が強まる中で「ジェンダー・クィア」は、性的イメージの表現が露骨だとして全米32州の138学区で検閲の対象となっている。

相手に性的な感情を持たない「アセクシュアル」のジェンダーを自認するコベイブ氏は、禁書処分に最初は悲しい気持ちだったが、それが怒りに取って代わったという。

コベイブ氏はトムソン・ロイター財団の取材に電子メールで「図書館から本が撤去されたり、図書館が資金援助を打ち切ったりすると、コミュニティー全体が痩せ細る」と社会への影響を危惧。「本は私たちに自分自身の姿を映し出したり、他の人の経験を知る窓を与えてくれたりする」と述べるとともに「この著作はさまざまな読者にとって、この両方の役割を果たしていることが分かっている」と訴えた。

米国図書館協会(ALA)の今年3月の発表によると、昨年図書館に寄せられた本の検閲要請は1269件と20年前の統計開始から最も多く、前年の2倍に急増した。

バイデン大統領も4月のイベントで「本を禁止し、追放しようとする、選挙で選ばれた当局者らと戦う大統領になるとは、思ってもみなかった」と述べ、禁書の動きを批判した。

<「子どもを守る」という理由>

学校図書館の本棚から議論となっているような本を排除する取り組みを支持している人々は、年齢的に不適当な本から子どもらを守ろうとしているのだと主張する。

こうした要求を掲げる団体「マムズ・フォー・リバティー」の創設者、ティファニー・ジャスティス氏は「全ての本を排除しろとは言っていない」と強調。「著者は本を書き、出版し、売るべきだ。公立の図書館に置きたいのなら、そうすればいい。でも、私たちが取り上げているのは公立学校のこと」であり「公立学校の図書館の本を取捨選択することは禁書とは違う」と言う。

表現の自由を擁護する非営利団体「PENアメリカ」によると、学校図書館で禁止されたり、保護者などから疑問の声が上がったりする公算が最も大きいのは、セクシュアリティ、性自認、人種に関する本だ。

昨年上半期に学校で規制された本のうち、30%が人種や人種差別に関するテーマを取り上げており、4分の1近くがジェンダーやセクシュアリティの問題に触れ、LGBTQ+が登場人物となっていた。

PENアメリカは、声明で「過去6カ月間に800タイトル余りが禁書処分を受けており、生徒は毎月100タイトル以上の本を読めなくなっている」と指摘。学校図書館からの本の排除が最も多い州としてテキサス、フロリダ、ミズーリ、ユタ、サウスカロライナを挙げた。

<ドラッグとセックス>

作家のベンジャミン・アリレ・サエンツ氏は著作の「アリストテレスとダンテ 宇宙の秘密を探る」が同性愛の描写やセックス、ドラッグが取り上げられているとして、全米の多くの学校図書館や学校で禁書の対象となった。

しかし、作家がLGBTQ+の人々、特に若い世代のロールモデルとして立ち上がるべきだということをこうした動きが強く示している、とサエンツ氏は受け止めている。「私は作家として、好むと好まざるとにかかわらず、コミュニティーのスポークスパーソンになる責任がある」と言う。

一方、本を巡る議論や、子ども向けの読み物の適切さについての議論は健全で不可欠なものだとの見方もある。

ノースカロライナ大学情報図書館学部のフランチェスカ・トリポディ助教授は「本に異議を唱える人々が、民主主義を脅かしていると考えるのは容易なことだ。だが、民主主義が機能しているからこそ、異議を唱えることができるのだ、と認めることも同じように重要だ」と話す。

ただ、トリポディ氏は抗議運動を行っている人々の動機が子どもの権利にあるのか、それとも保守派とリベラル派の国政論争を視野に入れたものなのか、そのどちらだろうかと疑問も投げかけた。

こうした活動の中には、図書館のサービスを受けている住民によって行なわれていないものもあるという。

(Lindsey Anderson記者)

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