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【解説】 イスラエルの人質救出、どんなリスクがあるのか - BBC.com

フランク・ガードナー安全保障担当編集委員(イスラエル・エルサレム)

Two Israeli tanks seen moving along a duty road with soldiers perched on top of them.

画像提供, EPA

イラクやアフガニスタンなどの戦場に13回派兵された英陸軍のチャーリー・ハーバート退役少将は、今回の出来事についてBBCにこう話した。「人質3人の射殺はどうしようもなく悲惨なことだが(中略)IDFの戦術、均衡性、識別方法を改めて疑問視させるものだ。同じような状況で、これまでに民間人がどれだけ殺されたのか、考えざるを得ない」。

IDFは、民間人に危害が及ばないよう細心の注意を払っているとしている。だが、ガザでの恐ろしいまでの死者数(1万8000人を超え、なお増えている)は、イスラエルが行っているのは「無差別爆撃」だという非難を呼んでいる。

歴史上の拉致事件の、ほぼすべてに共通していることがある。拉致された人が無傷で生還する可能性は、武力介入で奪還するより、調停や取引による解放実現の方が、はるかに高い。

イスラエル軍の誤射で死亡したアロン・シャムリズ(26)、ヨタム・ハイム(28)、サメル・タラルカ(22)の各氏(左から)

画像提供, Hostage and Missing Families Forum

私が若手のころに取材した人質事件のひとつに、1998年にイエメンでアルカイダ系ジハーディスト(イスラム聖戦主義者)が西側の観光客16人を拉致した事件がある。当時のイギリス大使はイエメンの内相に会い、交渉による人質解放を求めた。しかし、イエメン軍はすでに突入作戦を実施しており、手遅れだと言われた。拉致された人の4分の1が銃撃戦で死亡し、他の人たちも負傷した。

西側とイスラエルの特殊部隊は何十年もかけて、人質救出の技術を完成させてきたが、それでも常に計画どおりにいくとは限らない。イスラエルは1976年、ウガンダのエンテベで「サンダーボルト作戦」を実施し、人質106人のうち102人を救出したが、特殊部隊の司令官を失った。その弟が、現首相のベンヤミン・ネタニヤフ氏だ。

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1980年にロンドンのイラン大使館を英軍特殊空挺部隊(SAS)が包囲した事件は、おそらく現代の人質救出作戦の最も象徴的なものだろう。テレビカメラが注視する中で、実行されただけに。

2009年にアフガニスタンで英ジャーナリストのスティーヴン・ファレル氏がイスラム武装勢力タリバンに拉致された際には、英特殊部隊が救出した。ただこの作戦では、隊員1人と民間人2人、通訳のアフガニスタン人1人が死亡した。

その翌年には、同じくアフガニスタンでタリバンに誘拐されたイギリス人の開発援助活動家リンダ・ノーグローヴ氏を、米海軍特殊部隊が救出しようとした。作戦で拉致犯らは殺されたが、ノーグローヴ氏もアメリカ側の隊員1人が投げた手投げ弾で死亡した。

2012年にはナイジェリアで、英軍特殊部隊がイギリス人とイタリア人計2人の人質救出作戦を実施。ナイジェリア兵の1人が早まって発砲したため、気づいた拉致犯が人質を殺害し、作戦は失敗に終わった。

イエメンでの人質事件の場合、その多くは何年もの間、平和的に解決されてきた。たいていは、嗜好品(しこうひん)のカート(覚醒作用のある植物の葉)を果てしなくかみながら、長い時間をかけて部族間同士が交渉した挙句の、成果だった。だが究極的には、拉致した側が何を要求し、意図しているのかが大きく影響する。

イラクの武装勢力アルカイダやイスラム国(IS)による事件の場合、聖戦主義者の拉致犯らはそもそも、米英の人質を解放するつもりはなかった。それどころか、殺害の様子を撮影することで、最大限の心理的効果を狙っていた。この場合は通常、場所が特定でるなら、武力介入が唯一の選択肢となる。

ハマスに人質に取られ解放されたシャロン・アヴィグドリ氏(手前)

画像提供, Reuters

イスラム組織ハマスは、ある意味で混合型だ。10月7日にイスラエル南部を襲撃した際の残虐行為は、無慈悲なまでに残酷で暴力的だった。しかしその後、100人以上の人質の解放交渉に応じた。

ただし、拉致犯と、とりわけ多くの政府がテロリストとみなす者たちと取引するのは得てして、なかなか飲み込みにくいことだ。人質を取っている側は、何らかの見返りを要求するからだ。

ハマスが要求したのは、イスラエルの刑務所にいる多くの囚人の解放と、戦闘の一時停止、ガザに入る支援物資の量を大幅に増やすことだった。

ともかくも、これ以上の人質返還は外交的手段でしか実現しないと、前出のハーバート退役少将は言う。「ガザのこの問題について、効果的な軍事的解決策などない」。

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