【ロンドン＝板東和正】英国で新型コロナウイルスの変異種に感染する事例が増え、警戒感が広がっている。変異種の感染拡大は従来のウイルスに比べて速い恐れがあり、政府は変異種が出現したロンドンなどで飲食店営業の規制を強化した。ただ、変異種の脅威について明確な証拠が出ていないのも事実で、専門家らは過度に慌てることのないよう呼びかけている。
ハンコック保健相は１４日、ロンドンを含むイングランド南部を中心に変異種の感染者１千人以上が確認されたと発表した。ハンコック氏は「（変異種が）より重い症状をもたらす証拠はない」としつつ、感染者急増の要因である可能性はあるとの見方を示した。
実際、変異種が出現したロンドンでは１２月に入り、１５日間で累計感染者数が５万人近く増加。事態を重く見た英政府は世界保健機関（ＷＨＯ）に報告した上で、ロンドンや周辺地域の警戒水準を最高段階に引き上げ、飲食店の営業を持ち帰りや宅配のみに制限した。
英メディアによると、英ブリストル大のデビッドソン准教授は、変異を繰り返したウイルスが「ワクチンの有効性を低下させる恐れもある」と指摘。ただ、変異種がもたらす影響や被害については検証中で明確な結果が出ておらず、英ノッティンガム大のボール教授は「影響について語るのは時期尚早だ」と訴える。英バーミンガム大のマクナリー教授も、変異種の伝染力は明確になっていないとし、「取り乱すのはやめよう」と呼びかけた。
英政府関係者は「警戒を続ける必要はあるが、変異種の全貌が見えるまで政府は冷静に振る舞う必要がある」としている。
新型コロナの変異種は１１月、北欧デンマークで毛皮採取用の家畜ミンクから感染した人にも確認された。デンマーク政府はワクチンの有効性に悪影響を及ぼすことを危惧し、国内のミンクを全て殺処分すると発表した。しかし、殺処分を義務付ける法的根拠がないことが判明し、農家らが反発。担当大臣が辞任に追い込まれるなど国内情勢が混乱した。
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