2023年02月28日07時03分
ロシアのプーチン大統領は、ソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的惨事」と呼んだ。西側諸国が懸念する「大国の復活」は目指さないとうそぶくが、帝政ロシア以来の「版図」で軍事・経済ブロックを強化してきたのが実情だ。勢力圏死守のためにウクライナに侵攻したが、プーチン氏の思惑と裏腹にロシアの求心力は低下。旧ソ連構成国の中には侵攻に関し「あすはわが身」と感じる国もあり、相次いで沈黙を破り始めた。
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◇「カザフもなかった」
ウクライナやモルドバなどは欧州連合(EU)加盟を目指し、脱ロシアが顕著なのは不変。侵攻開始後の1年間で顕在化したのは、運命共同体とみられた親ロシア国の微妙な変化だ。
「(ウクライナ東部ドンバス地方の独立は)認めない」。中央アジア・カザフスタンのトカエフ大統領は昨年6月の国際会議で、プーチン氏を横に断言した。「偽の住民投票」(欧米)に基づくロシアへの一方的な「併合」は同9月。トカエフ氏は「民族自決」が無制限になれば、地球上に600もの国が誕生して大混乱に陥るとロシアを戒めた。
背景にあるのは、プーチン氏に対する根強い不信感だ。「ロシアがウクライナをつくった」という身勝手な歴史観を持つプーチン氏は2014年に「(ソ連崩壊まで)カザフに国家は存在しなかった」と発言した。カザフはロシア系住民を抱えており、今回の侵攻はひとごとではない。ロシアの核威嚇も旧ソ連核実験場の被害が残るカザフとしては容認し難い。
今冬、空爆で電気や暖房を失ったウクライナ国民にカザフから円形テントが寄贈された。ロシアが「説明を求める」(ザハロワ外務省情報局長)と不快感を示すと、カザフ側は「民間の活動だ」と突っぱねた。
◇相次ぐ苦言
中央アジアの最貧国タジキスタンのラフモン大統領は昨年10月の会議で、プーチン氏に向かって「小さな民族だが、歴史も文化もある。尊重してほしい」と訴えた。経済発展に協力してこなかった「旧宗主国」への苦言。プーチン氏は最近、欧米への対抗軸として「反植民地主義」を掲げているが、ラフモン氏にロシアの問題点を指摘された。
一方、ウクライナ侵攻でロシア軍は外国駐留部隊もかき集めており、旧ソ連圏で存在感の低下が著しい。南カフカス地方ではナゴルノカラバフ紛争が昨年9月に再燃。アルメニアのパシニャン首相は同11月、「アゼルバイジャンの侵略を防げなかったのは残念だ」として、ロシア主導の軍事同盟に疑問を呈した。アルメニアは今年予定された軍事同盟の演習に関し、自国での開催を拒否した。
欧米はウクライナへの主力戦車供与を決め、ロシアは長期戦を視野に入れる。仮にプーチン政権が親ロシア国の参戦を求めたくても、ドンバス地方などの「併合」を認めた旧ソ連構成国はない。戦争協力するベラルーシも派兵までしておらず、軍事同盟は「機能不全」に陥っている。
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