2021年09月02日07時56分
【ワシントン時事】2001年9月11日の米同時テロから間もなく20年を迎える。バイデン大統領はこの間に及んだアフガニスタン駐留米軍の撤収を断行。外交安保政策の重心を台頭する中国との競争にシフトする狙いがある。だが米国が威信を懸けて取り組んだアフガンやイラクの民主化に失敗し、テロの脅威は残ったまま。同盟国との関係がぎくしゃくするなど、迷走を続けた20年は米国の信頼性と国力をむしばんだ。
◇民主化に700兆円投入
米国は同時テロへの報復に端を発したアフガンとイラクの戦争に約6.4兆ドル(約700兆円)を投入し、米兵約7000人を失った。この金額は日本の国家予算の約7倍に当たる。バージニア大のメルビン・レフラー名誉教授は、「対テロ戦が国づくりと民主主義の促進に拡大し、出費が天文学的数字に膨れ上がった」と指摘する。
01年10月にアフガンを攻撃したブッシュ(子)政権がイスラム主義組織タリバン政権を崩壊させた後も米軍を駐留させたのは、アフガンをテロの温床にしないために「民主化」が不可欠とみなしたためだ。03年には大量破壊兵器保有という誤情報を基にイラクのフセイン政権を打倒。ここでも「民主化」に着手する。
しかしアフガンとイラクの新政権は安定せず、治安状況の悪化から駐留する米軍は「永遠の戦争」に突入することになる。この間、両国で犠牲になった民間人は20万人以上。バイデン氏は今年8月31日の演説で「今回の決定は、大規模軍事作戦で他国をつくり変える時代の終わりを示すものだ」と述べ、20年間の民主化政策が徒労に終わった事実を認めた。
◇米の影響力低下顕著
ブッシュ氏は01年の大統領就任当初、中国を「戦略的競争相手」と位置付けたが、対テロ戦への傾斜で、中国の台頭を軽視。中国による南シナ海の一方的な現状変更など軍事、経済面での勢力拡大を許したとの見方がある。
米国の世界経済に占める国内総生産(GDP)比率は00年の30%から20年は25%に低下。一方で中国は10年に日本を抜いて世界第2の経済大国になった。
09年に登場したオバマ大統領は穏健派イスラム勢力との連携や、中国への対抗としてアジア重視政策を打ち出した。しかしシリア内戦などが激化する中東への関与拡大に消極的だったため、過激派組織「イスラム国」(IS)が伸長し、いったん撤収したイラクへの米軍再派兵に追い込まれた。
続くトランプ前大統領は、中東各国の内戦終結に向けた和平仲介を放置した。テロ対策の一環としてイスラム諸国を対象にした入国制限を実施し、世界中の反発を招いた。
◇約束を果たさない米国
バイデン氏は外交政策の重要課題に中国への対抗を掲げ、同盟国や友好国との連携を推進する。ジョージタウン大のマシュー・クレイニグ教授は、過去20年の結末を受けて「自立した国を建設するという約束を果たせずに撤収することで、米国の信頼は損なわれるだろう」と述べ、米国と同盟国の間に影を落とす可能性を指摘。インド太平洋の同盟国を米国が守るのかどうか、中国の計算にも影響を及ぼすと懸念を示した。
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