スティーヴン・マクドネル北京特派員
中国政府の新型コロナウイルス対策について知りたければ、何を言っているかより何をしているかを見るべきだ。
北京市を例にとろう。
感染者数が大幅に減っているわけではない。しかし公共交通機関の利用にPCR検査の結果は必要なくなった。バーやレストランも徐々に営業を再開している。そして、COVID-19にかかっても隔離施設に行かずに自宅隔離ができる事例も出てきた。
何が起こっているのかを調べれば、その方向性は明らかなように思える。中国政府は静かに、「ゼロコロナ」という目標を捨てたようだ。
だからと言って、全ての新型ウイルス対策が終わるわけではない。いくつかの制限が、たとえば半年で終わるということでもない。
しかし、アウトブレイクのたびに新規感染者をゼロまで減らすという目標はなくなった。
新たな計画は、この病気を撲滅しようとするのではなく、ウイルスの感染速度を抑え、できれば医療システムが対応できるようにするもののようだ。
感染や重症化、死者数の流れを管理するために、ウイルスの拡散を監視することになるかもしれない。
いくつかの対策が復活することもあるかもしれないが、都市が動き続けるために、感染者数ゼロを記録する必要はない。
北京市だけがいくつかの対策をやめているわけではない。その方法も地域によってさまざまだ。
南東部の浙江省では、特定の職業に就いている人以外は、定期的な検査は受けなくてよくなった。
東部・山東省でも、せき止め薬の購入時や高速道路での運転での検査がなくなった。湖南省は、住宅地へ入るときのPCR検査をとりやめた。
こうした緩和が上海、武漢、重慶、広州、深圳、成都といった大都市でも見受けられる。
西部・新疆地区のウルムチでは、スーパーやホテル、映画館、ジムなどが営業を再開した。チベットでも公共交通機関が運行し始めた。
ほんの数週間前には、中国政府は国民にゼロコロナ政策に従うよう求めていた。
この政策が中国経済と人々の生活に打撃を与えているという大量の証拠があるにもかかわらず、習近平国家主席は先の中国共産党全国代表大会で人民大会堂に立ち、この政策を変えることはないだろうと強調した。
そして、抗議が起こった。
10人が死亡したウルムチのアパート火災が、人々の怒りの波を引き起こした。
ソーシャルメディアでは、火災で犠牲者が出たのは、新型ウイルス対策が消防隊の現場へのアクセスと住民の避難経路をふさいでいたからだという意見が見られた。中国政府はこれを否定しており、BBCも証拠を得ていない。しかしこの火災が中国全土にデモを広げたのは間違いない。
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あらゆる都市で、人々がゼロコロナ政策終了を求め、これまでの生活に戻りたいと語った。習国家主席の辞任を求める声もあがった。
共産党に対する国民の反感がここまで活動として広がったのは、1989年の、天安門での犠牲者を伴う弾圧につながった政治騒動以来だ。
そして突然、変化が訪れた。中国の人々は、いかに抗議が実を結んだか冗談を飛ばしあっている。
先週の江沢民元国家主席の死去も、政府に圧力をかけた。多くの人が江氏の時代を、中国が外部とのつながりを取り戻し、高速成長を遂げた時代として、ノスタルジックに受け止めている。現状との比較は厳しい。
習政権にとってもう一つの危険は、国民の弔意がさらなる抗議行動に発展することだった。数十年前に改革派の指導者である胡耀邦氏が死去した際には、その死を悼んだ集会が天安門事件へと発展したからだ。
こうしたことから、新型対策に対する国民の怒りを極端に過小評価してきた政府が、急に方針を転換した。
いま求められているのが、面目を保ちながらの転換だ。
中国の政治家や政府職員は、人々を必要以上に閉じ込めていたことについて、公の場へ出て謝るようなことは決してしない。
しかし、共産党は国営メディアを通じた国民へのメッセージを変え始めている。今では、新型ウイルスの変異株はそれほど致命的ではないとしている。
これは、中国以外の世界はコロナ地獄に陥っており、安全に暮らせる中国に住んでいることを幸運に思うべきだという、これまでのメッセージとは明らかに違っている。
だが、大きな課題が2つ、まだ残っている。
まず、より多くの人、特に高齢者や感染リスクの高い人たちにワクチンを接種させる努力が不十分な点だ。公式発表によると、80歳以上で2回の接種と追加接種を終えているのはわずか40%。香港では、新型ウイルスでの死者の大多数が、ワクチン未接種の高齢者だった。
次に、病院の集中治療室の増床が挙げられる。当局はこのために何年もの時間があったはずだったが、なお不十分な状態だ。そのため、感染が劇的に増加すれば救急患者が殺到し、医療システムが本当に試されることになる。
こうしたことから、病院が疲弊しないように、物事をゆっくり進めることが目標になる。そうすれば、いつでも制限を再開できる。
中国の新たな道は、時には再び後退することになっても、一歩ずつ出来上がっていくだろう。
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