<19年、20年と0人だったアメリカにおける狂犬病の症例が、21年には5人に急増。CDCはリスクを認識し直すことの重要性を訴える>
昨年、アメリカでコウモリを介した狂犬病の感染例が次々と報告された。9月28日~11月10日の6週間には、3人が死亡したと米疾病対策センター(CDC)が報告している。3人はアイダホ州、イリノイ州、テキサス州の子供1人と大人2人。すべて男性だった。
彼らは全員が発症の3~7週間前となる8月にコウモリと直接接触していたことが分かっており、発症から2~3週間以内に死亡した。CDCの報告書によれば、2件は「回避可能な(ウイルスへの)暴露」であり、うち1件については素手でコウモリを拾い上げていたという。
また3人とも、ウイルスに感染した可能性がある後に接種することで狂犬病の発症を防ぐことができる「暴露後予防(PEP)」を受けていなかった。CDCによれば、3人のうち2人は暴露による狂犬病のリスクを適切に認識していなかったようだが、1人については「長年にわたるワクチンへの不安」を理由に、コウモリが狂犬病ウイルスの検査で陽性と示された後にもPEPの接種を拒否していた。
昨年はじめには、すでに2人が狂犬病で死亡していたため、これらの症例によってアメリカにおける年間の狂犬病の症例数は5人となった。19年、20年には狂犬病の症例は報告されておらず、5人という数は過去10年で最大になるという。
コウモリとの接触には現実的なリスクが
CDCの狂犬病専門家で獣医のライアン・ウォレスは声明で、「アメリカは毎年、狂犬病に感染する人の数を減らすべく長い道のりを歩んできた。だが最近の一連の症例は、コウモリとの接触には現実的な健康リスクがあるという厳しい現実を思い起こさせる」と記している。
アメリカにおけるヒトへの狂犬病感染は「まれ」と見なされている。CDCによれば、通常は年間に1~3例の症例があり、09~18年の間には25件の症例が報告された。そのうちの7件はアメリカ国外で感染したものだったという。
CDCは報告書で次のように述べている。「狂犬病の報告数は07年以降、安定してきた。最近の急増が示しているのは、狂犬病のリスクについての人々の認識が欠如しているということだ」
コウモリは生態系において非常に重要な種であるが、一方でアメリカでは狂犬病をもたらす主な原因であり、感染例の70%を占めている。コウモリと人間の両方の健康を守るために、コウモリとの接触を避けることが重要となる。
コウモリが咬んだり引っかいたりした傷は非常に小さいため、本人が気付かないまま狂犬病に感染してしまうこともある。そのためウイルスに暴露したかどうかが確かでなくとも、PEPを受けることが重要となる。
発症前にPEPを受ければ、「ほぼ100%」の予防効果があるとされるが、一方でひとたび発症してしまうと、命が助かる可能性は「ほぼ0%」だ。目覚めたとき、もし部屋に見知らぬコウモリがいれば、まずは医師に連絡してPEPが必要かを相談すべきだろう。
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