【北京=三塚聖平】新型コロナウイルスの感染が世界で最初に広がった中国湖北省武漢市で、感染拡大を阻止するために都市封鎖が行われてから23日で2年。習近平政権は、強権的に全住民の移動を制限した〝武漢封鎖〟を歴史的成果と評価し、わずかな感染拡大も許さない「ゼロコロナ」政策に固執している。一方で当局が過剰に対応したケースも報告されており、住民は多大な負担を強いられているのが現状だ。
武漢では2020年1月23日から約2カ月半にわたり封鎖措置がとられた。
「感染症と戦う人民戦争、総力戦、阻止戦を展開し、武漢と湖北を守る戦いを綿密に行った」。昨年11月に採択された中国共産党創建100年の歴史を総括する「歴史決議」は、武漢封鎖をこうたたえた。武漢市民は現在、通常の生活に戻っている。
中国各地では武漢封鎖の「成功」を受けて、コロナの感染拡大が確認されるとすぐに、同様の封鎖措置がとられるようになった。武漢封鎖後、米欧のような爆発的な感染拡大が起きておらず、中国国民からも強権的な防疫措置は支持されており、ゼロコロナは習政権の看板政策となった。
ただ、ここにきてゼロコロナへの反発が出ている。昨年12月23日に封鎖措置が始まった陝西(せんせい)省西安市では食料不足など混乱が生じたほか、防疫措置を理由に受診を断られた妊婦が死産。地元記者の江雪さんは「本質的には人為的な災難だ」と、ゼロコロナ政策に基づく当局の対応を批判した。
また、黒竜江省ハルビン市では今月22日、市中感染者が一人も確認されていないにもかかわらず、当局が全住民に対してPCR検査を行うと表明するなど行き過ぎも指摘されている。感染が拡大すれば地元当局幹部が責任を問われて処分されるため、過剰な対応を行っているとの見方もある。
今年は北京冬季五輪や共産党大会という重要イベントが控える。ゼロコロナ政策の見直しは習政権の成果を否定することにもつながりかねない。
武漢での感染拡大をめぐっては、中国政府内で「米軍がウイルスを持ち込んだ」との主張がみられた。北京市では今月15日に新変異株「オミクロン株」が初確認されたが、当局は今回も海外からの郵便物を通じて感染した可能性を強調。国際郵便物を受け取る際にはマスクや手袋を着用し、郵便物の消毒や手洗いの徹底を呼び掛けている。
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