2023年01月25日07時07分
岸田文雄首相が検討しているウクライナの首都キーウ(キエフ)訪問を巡り、外務省などの関係者が頭を悩ませている。時期はロシアの侵攻から1年を迎える2月中が一つのめど。首相は意欲的とされるが、日本の首相が戦火をかいくぐって外国を訪れた前例はなく、移動経路や日程の秘密保持、護衛など課題は多い。
首相は6日、ゼレンスキー大統領との電話会談で招待を受け、記者団に「諸般の状況を踏まえ検討したい」と語った。
首相の念頭には、5月に地元広島で開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)がある。ウクライナ支援が主要議題となるが、ロシアの侵攻後、大統領と対面していないG7首脳は議長を務める首相だけだ。また、核の脅威にさらされる同国訪問は、サミットに向けて核軍縮の機運を盛り上げたい首相にとって格好のパフォーマンスとなり得る。外務省幹部は24日、「首相からのプレッシャーを感じている」と語った。
訪問を決断した場合、政府専用機でポーランドなど周辺国に到着後、陸路でのキーウ入りが有力だ。日本からの行程は片道だけで1日前後を要すが、ウクライナ上空は「ミサイルやドローンが飛び交っている」(外務省関係者)。報道によると、先月のゼレンスキー氏訪米では、キーウから夜行列車で秘密裏にポーランド南東部プシェミシルに向かい、近郊の空港から米軍機に乗り込んだ。
ただ、首相の隠密行動は極めて困難だ。外国訪問は事前に国会の承認を得るのが通例。航空機は識別信号を発信しながら飛行しており、政府専用機も例外ではない。首相周辺は「敵に標的を教えてあげるようなもの」と漏らす。
昨年6月、ドイツ、フランス、イタリア3首脳がそろってキーウを訪問した際は事前報道があった。外務省幹部は「そこを攻撃すれば世界中を敵に回す。コストの方が大きいから事前に言ってしまう考え方もある」と明かすが、不安は残る。
現地での安全確保も重要だ。自衛隊が担うには法的根拠がない。警視庁の警護員(SP)が周囲を固めるとしても、装備は大きく劣る。ウクライナ軍は国の存亡を懸けて交戦中だ。自衛隊幹部は「英仏などに依頼する可能性はある」と語った。
自民党内には「統一地方選の前にヒットを打ってもらいたい」と電撃訪問に期待する声も出ている。茂木敏充幹事長は24日の記者会見で「現地の状況を自分の目で見るのは有意義だ」と後押しした。一方、首相と距離を置くベテランは「人気取りなら何でもやる」とやゆした。
首相周辺は「今の状況で行くことは99.99%ない」と打ち消した。外務省でも「シミュレーションを呼び掛けたが誰も答えを持っていない状態」(関係者)という。松野博一官房長官は24日の会見で「何ら決まっていない」と述べるにとどめた。
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