【ロンドン=板東和正、北京=三塚聖平】香港の旧宗主国、英国は31日、昨年6月末に施行された香港国家安全維持法(国安法)への対抗措置として、香港市民の英国永住権取得に道を開く特別査証(ビザ)の申請の受け付けを開始した。香港で言論統制が強まる中、30万人前後の香港市民が5年以内に英国に移住する可能性がある。
特別ビザは、1997年の香港返還前に生まれた香港市民に英国政府が発行する「英国海外市民(BNO)旅券」の保有者とその扶養家族が申請できる。
これまではBNO旅券を持っていても英国の永住・市民権はなく、滞在期間は6カ月間に制限されていたが、特別ビザがあれば5年間の滞在が可能になる。また、5年間の滞在後に永住権を、その1年後には市民権を取得できる。
ラーブ英外相は1月29日の声明で、国安法は「(一国二制度を定めた)中英共同宣言への重大な違反だ」と非難。「香港の人々に対する歴史的な責任を果たす」と強調した。
BNO旅券の保有者は約35万人。BNO旅券の申請資格がある市民を合わせると、特別ビザの資格対象は500万人以上になると推定される。英政府は、実際には5年以内に26万~32万人が英国に移り住む可能性があるとみている。
一方、中国側は、英国の措置に猛反発している。中国外務省と香港政府は1月29日、BNO旅券を31日から有効な旅券や身分証明書として認めないと発表した。
中国側の措置は、香港の旅券を持つ多くの市民には大きな影響はないとみられる。ただ、香港メディアは、BNO旅券の保有者らが英市民権を取得した場合、中国側が香港市民の身分を取り消すと予想。将来的に香港や中国本土に入る際に、問題が起きる可能性を指摘している。
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