1月6日の連邦議会議事堂襲撃を煽動した責任を問うドナルド・トランプ前大統領に対する弾劾手続を機に、大統領経験者に与えられる待遇の一部を失う可能性があるのではないかとの観測がネットで広がっている。
だが法律専門家によれば、現行法のもとでは、仮に弾劾が成立した場合でも、年金やオフィススペース、身辺警護などトランプ氏に与えられる特典はそのまま維持されるという。
トランプ氏は、比較的曖昧さの残る「元大統領法」に助けられることになりそうだ。
「元大統領法」とは
1958年に成立した法律で、元大統領に対して生涯にわたる特典を与えるものだ。特典の内容は、「適切なオフィススペース」、シークレットサービスによる身辺警護、年間約10万ドル(約1042万円)のスタッフ人件費補助、現在約22万ドル相当の年金などである。
この法律は、1953年に退任したハリー・トルーマン元大統領が、大統領就任前の新規事業の失敗で債務に苦しんでいたことから、同氏を金銭的に救済する目的で可決された。
トランプ氏の場合、これらの特典の価値は合計で年間100万ドルを超える可能性がある。政府支出を監視している全米納税者連合基金の報告書によれば、米国の納税者は、存命の元大統領4人に特典を提供するために毎年約400万ドルを費やしているという。
この報告書によれば、最も価値の高い特典はオフィススペースで、2020年、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ元大統領は、国費負担のオフィス賃料としてそれぞれ50万ドル以上を受け取っている。
大統領が特典を剥奪されることはあるか
ある。ただし、ミシガン州立大学のブライアン・カルト教授(法学)によれば、大統領の任期中に解任された場合に限られる。下院による弾劾訴追決議だけでは、この特典への影響はない。
多くの連邦議会議員や著名人が、退任の迫ったトランプ氏の解任を求めたが、同氏はその運命を免れた。したがって、退任後の特典は安泰である。
ただし、安心はできない。法律はいつ改正されるか分からないからだ。現代の大統領は高収入を得る機会に恵まれており、退任後も公的な支援は必要ないとして、「元大統領法」は不必要なコストを生んでいるという主張もある。
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