<ロシア全土で展開された前例のない反政府デモは「ロシアの春」につながるのか>
ロシアでは1月23日、約100の都市や町で、反体制派活動家アレクセイ・ナワリヌイの暗殺未遂と身柄拘束に抗議する大規模なデモが行われた。国民がここまで反政府感情をむき出しにするのは、ロシアでは珍しい。
デモの参加者たちは凍てつく寒さや高圧的な機動隊、新型コロナウイルスの感染リスクもものともせず、政府に対する怒りの声をあげた。報道によれば、首都モスクワでは4万人が参加したほか、抗議はロシア全土に広がり、約3000人が警察に身柄を拘束された。
観測筋は、今回の抗議デモは「前例のない規模」だと指摘。英BBCは、首都モスクワでの抗議デモは過去10年で最大の規模だったと報じた。2020年8月に毒殺されかかったナワリヌイは、1月に療養先のドイツからロシアに帰国した直後に当局に身柄を拘束された。
ジョー・バイデン米大統領は、ナワリヌイと身柄を拘束されたデモ参加者を「無条件で釈放」するようロシアに呼びかけた。バイデンはロシアのウラジーミル・プーチンに対して、ドナルド・トランプ前米大統領よりも厳しい姿勢で臨むと予想されており、今回ロシア全土で発生した抗議デモはバイデン新政権にとって、発足早々に手にした広報戦略上の勝利だ。
ナワリヌイ派の賭けが成功
しかしプーチンにとって、抗議は珍しいものではない。ロシアを統治してきたこの20年、彼は数多くのスキャンダルを切り抜け、野党指導者や抗議デモをかわしてきた。プーチンに批判的な者たちは、今回の反政府デモがいわば「ロシアの春」につながると期待しているかもしれないが、差し当たってその気配はなさそうだ。
ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンの教授でロシア政治の専門家であるマーク・ガレオッティは本誌に対し、「これはひとつのプロセスのはじまりに過ぎない」と語る。「今回の抗議デモでまず注目すべきは、参加者が少なければナワリヌイ派は致命的な打撃を受けていたと思われるのに、そうならなかったことだ」
「彼らは真冬、しかもパンデミックのさなかに、1週間前の通知で抗議デモへの参加を呼び掛けた。これは賭けだ」とガレオッティは言う。「それが実際に、ロシア全土で年齢もばらばらの多様な人々が参加する大規模なデモになったことには、重大な意味がある」
ガレオッティはさらに、「これは革命ではなく、プーチンの失脚につながる運動でもない」と指摘。「それでも、ロシア国民が抱えるさまざまな問題の解決には、ロシア政治に何らかの構造改革が必要だという主張に力を与えることはできた」
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