【北京=坪井千隼、バンコク=岩崎健太朗】中国の王毅国務委員兼外相が11~16日の日程で東南アジア4カ国を歴訪し、新型コロナウイルスのワクチン提供などを約束した。上旬にはアフリカ5カ国も訪問。米国の政権交代のタイミングをとらえ、ワクチンや経済協力を武器にした外交攻勢を強めている。
「ワクチンが世界的な利益になるよう、中国はあらゆる取り組みを尽くす」。王氏は16日、フィリピンでロクシン外相やドゥテルテ大統領と相次いで会談し、中国製ワクチン50万回分の提供やインフラ開発に向けた5億元(約80億円)の資金供与を表明した。
フィリピンは中国と南シナ海の領有権問題を抱え、国民からは中国製ワクチンに不安の声も上がっている。しかし、ドゥテルテ氏は「中国は地域経済の再生に非常に重要な役割を果たしている」と謝意を述べ、緊密な関係維持に努める意向を示した。
王氏は11日には、ミャンマーで2期目の政権発足を控えるアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相らと会い、中国製ワクチン30万回分の提供を約束した。ミャンマーは、イスラム系少数民族ロヒンギャ迫害問題を巡り欧米などから批判が集まる。しかし、王氏は「国家主権を守り、国情に沿った発展を遂げることを支持する」と寄り添う姿勢を強調した。
13日には、中国製ワクチンの緊急接種が始まった当日のインドネシアを訪問。第1号として接種した直後のジョコ大統領と会談し、安全性をアピールする場になった。14日には、今年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国ブルネイにも足を運んだ。
◆一帯一路の沿線国も
中国と対立を深める米国は20日にバイデン氏が大統領に就く予定。香港などの人権問題でこれまで以上に厳しい「対中包囲網」も予想される。中国は先手を打つ形で、ワクチン確保を急ぐ東南アジア諸国などとの距離を縮めておきたい思惑がある。
今月4~9日のナイジェリア、コンゴ民主共和国、タンザニアなどアフリカ諸国への歴訪でも、ワクチンや医療物資などコロナ対策や経済支援の継続を伝達。中国の経済圏構想「一帯一路」の沿線国であり、国際世論を巡る多数派工作でアフリカ各国の支持が欠かせないという事情も透ける。
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