毒で襲われ、かろうじて命をつないだ反体制派の指導者が、帰国直後に拘束された。
明白な弾圧であり、重大な人権侵害だ。ロシア政府はただちに釈放し、真相解明と責任者の処罰を行うべきだ。
拘束されたのは、政財界の腐敗を告発してきたアレクセイ・ナバリヌイ氏である。昨夏にロシア国内線の機内で毒殺未遂に遭い、ドイツで療養してきた。
同氏は以前、経済事件をめぐる有罪判決を受けており、刑の猶予期間中の義務を怠ったというのが今回の拘束理由だ。
いかにも後付けの口実というほかない。ロシア全土で抗議デモが相次ぎ、多数が連行されている。国際社会から非難と懸念の声が噴出するのは当然だ。
昨夏に使われた毒は、旧ソ連期に開発された神経剤とみられている。英国の調査報道グループは、関与したのはロシアの治安機関の8人だと発表した。
うち1人は、ナバリヌイ氏が政府高官を装って電話をかけたところ、毒を使った具体的な手口まで説明したとされる。
プーチン大統領は言下に否定している。当局がナバリヌイ氏を監視していた事実は認める一方で「(毒殺するつもりなら)最後までやっていただろう」と言明した。そのうえで、同氏が外国の反ロ工作に関わっているかのような見方を示した。
ロシアではこれまでも、政権に批判的なジャーナリストや元高官が暗殺されてきた。国外でも、反体制に転じた元情報機関員が、今回と同種の毒物による殺害未遂に遭ったり、放射性物質で殺されたりしている。
民主国家を標榜(ひょうぼう)するロシアにとって極めて深刻な事態だが、プーチン氏は、実態調査や国内の人権状況の改善に一貫して後ろ向きだ。
一方でプーチン氏は、昨年の憲法改正により、83歳で迎える2036年まで大統領職にとどまることが可能になった。
さらに、大統領経験者は生涯にわたり刑事、行政上の責任を問われない特権をもつ、とする法律を先月、成立させた。自身に対して、終身恩赦を与えたに等しい。
プーチン氏が強引に権力固めを急ぐこと自体、自らへの批判に恐怖にも似た感情を抱いていることの表れだろう。
だが、権力者が自らの権勢と保身を社会の自由や人命よりも優先するような国は、国際社会において信頼されない。他国と建設的に協力し、相互発展することも難しいだろう。
強権的な統治手法を捨て、真の民主化を進めることでしか、繁栄するロシアを次世代に残せない。その現実をプーチン氏は直視するべきだ。
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