驚いたのは、中国が、7月の時点ではまだ反政府勢力だったタリバンを外国からの賓客として招いたことだった。周知のように、中国国内では、反政府勢力の存在は認められていない。香港で、中国共産党に批判的な団体が、壊滅的な打撃を与えられているのは報道の通りだ。しかも中国国内のイスラム教徒は、欧米が指摘するように、新疆ウイグル自治区でひどく人権を抑圧されている。 矛盾した状況の中で、中国が外交慣例を破ってまで、タリバン幹部との面会に踏み切ったのは、やむに已まれぬ事情がある。 今年1月、当時のアメリカ寄りアフガン政府は、首都カブールで、中国国家安全部員と見られる武装集団10人を拘束した。国家安全部は、アメリカで言えば、CIAに相当する中国のスパイ部門だ。詳細は明かされていないが、中国人らは、タリバンの中でも、最強硬派の「ハッカーニ・ネットワーク」と接触していたとみられている。 なぜか? 中国の新疆ウイグル自治区は、アフガニスタンと国境を接している。細長い国境地帯は、シルクロードの一部で、西遊記で有名な玄奘三蔵も孫悟空らをともない(? )この道を通って中国に帰国したと言われている。この道は今は、中国側で封鎖されているが、遊牧民などの通行は例外的に認められている。要は、日本では想像できないような奥深い山中で、完全な封鎖などできないわけだ。この道は、タリバンの主要な資金源であるアヘンの中国への密輸ルートになっている。 そして、より重要なのは、この道が、中国国内、主に新疆ウイグル自治区内の反中国政府のイスラム勢力に対する支援ルートになっていることだ。タリバンという言葉のもともとが神学生を意味している通り、イスラム教を強く信奉する勢力だ。イスラム教を広めるためならテロもいとわない。イスラム過激派とかイスラム原理主義者と言われる所以だ。だから、タリバンとしては、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒らを支援したくなるのだが、中国国内でタリバンお得意のテロ攻撃などがあれば、中国としては、たまったものではない。そこで、タリバンが中国国内のイスラム勢力と手を結ぶことがないよう情報収集していたのがカブールで拘束された中国の国家安全部員であり、王毅が天津でバラダルと会談したのも、タリバンに釘を刺すことによって、なんとか中国国内でのテロ活動を防ぎたいというのが第一目的だろう。
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