こうした中で、都市封鎖のさなか、患者の治療にあたった医師が、匿名を条件にNHKの取材に応じ、当局の情報統制の実態を証言しました。
この医師によりますと、勤務先の武漢市内の病院では去年1月以降、新型コロナウイルスへの感染が疑われる患者が、肺の病気で相次いで死亡し、保健当局に報告しようとしたところ、死因を高血圧や糖尿病などの持病に書き換えるよう死亡診断書の改ざんを指示されたということです。
そのうえで、遺体を直ちに火葬するよう求める意見も、合わせて診断書に記入するよう命じられたということです。
医師は「同僚の医師が、亡くなった患者3人の死因を新型コロナではなく『肺の病気で死亡』と書いただけで、その日の晩に、院長が保健当局に呼び出され、『死者を3人も報告するなんて迷惑だ』とどなられた。当局の目的は、死者の数を減らすためであることは明らかだ。元のデータが改ざんされているので、いったい、どれだけの人が亡くなったのかわからない」と話していました。
また、政府の発表前に感染拡大への警鐘を鳴らしながら亡くなった医師の李文亮氏については、「李氏は医師としての職業倫理から話すべきことを話しただけで、英雄になろうと思っていたわけではない。このような経験をした武漢市民は、李氏のことを決して忘れることはないだろう」と話していました。
医師は、情報統制の在り方に疑問を投げかけていた李氏の訴えに中国政府が向き合わなければ、再び対応を誤る可能性があると指摘し「真相を目の当たりにしながら口を閉ざせば、この国で何が起こっているのか、誰も知ることができない。私も医師として経験したことを話さなければならない」と話していました。
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